第9話 『三匹のおっさん』
『すいませーん、鈴木さーん』と間延びした女性の呼びかけが後ろから聞こえた。振り向くと、会社の事務員である
『何これ?』環は、呆れたように鈴木の借りた本を呆然と眺めた。「チカラのいらない護身術」「ラクに逃れる護身術」「とっさのとき、すぐに穫れる護身術」などが重ねられていた。『スピは誰かに命でも狙われてるの?ってか相手がデューク東郷レベルなら、こんなの借りても無駄よ』カウンターで口角を吊り上げながら環は返答した。『いや、あの、実はですね…』鈴木は、声を潜めて、環に耳を近づけて、話しかけた。『ストーカー?』環の周りに響くような大声に、鈴木は両手でかき消すような仕草をした。『猫下さん、声が大きい』右手の人差し指を唇の前に置き、しーっというニュアンスをする鈴木に対して、おいおい、と環は内心で呆れた。このような本を読んで、一介の素人が誰かを守れるような強者になれるポテンシャルを要求するか?とは言葉には出さなかったが、ため息は盛大に吐き出た。言えば鈴木のやる気の出鼻を挫くし、それはそれで鈴木が気の毒だ。『ストーカーって、
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