第3話 『湾岸リベンジャー』
環は叔父から譲り受けた初代L880Kコペンをフルレストアしてもらう為に、F井県の中でもかなり有能な整備士のいるディーラー元へと足を運んでいた。20年、20万キロのコペンは見た目は綺麗でも、中身はボロボロ状態。アルコール依存で入退院を繰り返す叔父と同じく、人間もクルマも同じく、壊れてからでは相当な時間とお金がかかる。鮮やかなグリーンマイカメタリック、丸いヘッドライトに前か後ろか分からないほどのラウンディッシュなボディ。曲線で構成されている味のあるデザインは、初代ミニクーパーのような古き良きレトロっぽさも親近感があっていい。何よりも大好きな叔父から譲り受けた賜物だ。動く限りは出来るだけ大切に乗ってあげたい。しかし最近はギアの入りが悪く、高速では問題ないが、渋滞したりするとすぐにノッキングを起こす。近辺の田舎道ではガリガリと音をあげ、クラッチを何回も踏んでギアを入れ直ししないといけない。一度坂道でのノッキングした時は、背中に、冷や汗をかいたものだった。正直今の経済状況ではクルマにあまりお金をかけられる余裕はないが、このコペンだけは絶対に手放したくは無かった。周囲には雑草が生えていて刈られることもなく、潰れた工場のような場所に修理待ちのスポーツカーが数台停められていて、中からぬっと油で汚れたツナギを着た男性が出てきた。『よお、タマちゃん、予定よりだいぶ早かったな』一級整備士の資格を取得している
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