第2話

そのことは一旦置いておいて、まずは私のことを紹介しよう。私の名前は日野 響。現在は訳ありで、月影探偵事務所というところに居候している。


あくまでも居候の身なので、正直給料なんて期待してもいなかった。だから、ちょっと前までは日雇いバイトをして金を稼いでいた。なんとなくそうした方がいい気がしていた。


そう思っていたのだが、実際はそうではなかった。事務所の人から、給料を振り込んでおいたと言われた。確認してみると、確かに、振り込まれていた。


当然、喜ばしいことではある。しかし、どうせならもっと早く言ってほしかった。今まで何のためにバイトをしてきたのか。このようにして、私はバイトを頑張らなくてもいいということが判明した。


だから、私は探偵としての活動に専念しようと思った。一応、元から探偵的なことはしていたので、何とかなるだろうという考えだ。最近も事件を解決したし、探偵としての活動にもブランクはない。多少はなんとかなるだろう。


探偵としては、殺人事件を推理することが多かった。遠出すれば事件が起こり、呼び出されたと思えば事件の推理をしてほしい。こんな感じなので、殺人事件というものにあまり抵抗感を感じなくなっている。ちょっとしたホラーだ。


さて、それでは本題に入ろう。冒頭で語られていた「軍服の人魚姫」のことだ。そもそも、私は最初から知っていたわけではない。私自身はこういった怪異というものについて、さほど詳しくない。


それでは、なぜこのことを知っていたのか、ということだが、これには私の友人が関係している。彼女は、各地の伝説や都市伝説というものを調べている。私にとっては、変わった趣味をしている人だ。


そんな彼女からある日メッセージが届いた。

それは一件のURLだった。それこそが、軍服の人魚姫のことを扱ったサイトだった。


響「何これ」


友人「見てわかんない?」


響「分かんないから聞いてるんだけど。『軍服の人魚姫』つてなんなの?」


友人「見ろや!サイトを!」


何か急に関西人みたいになるじゃん。いや、こんなことを言っては関西人に失礼だな。こいつが極端に短気だとか、きっとそんなんだろう。


私は、渋々ではあるが、そのサイトを読むことにした。そこに書かれていたのが、最初に語った話である。


なんとか、その話の内容は理解できた。しかし、どうしても理解できないことがある。彼女が私にこのURLを送った理由だ。聞いたところで分からないだろうとは思うが。


響「一応読んでみた」


友人「どうだった?」


響「あんたが好きそうなやつだな、ぐらいにしか思わなかった」


友人「反応冷た!」


響「それで、何でこんなものを送り付けてきたの?」


友人「あー、そのことね。そんなに重要なことでもないんだけど、このことを調べてきてほしくて」


こういうことだ。簡単に言ってしまえば、パシリといったところだ。なんとなく嫌な予感がしたのと、面倒事になるのはなるべく避けたかったから、ひとまず断ることにした。


響「調べないとだめ?」


友人「え、何で嫌がるのよ」


響「めんどくさいかと思って。自分が興味あることなんだし、自分で調べたら?」


友人「あのさぁ、ウチは忙しいの。分かる?」


なんだと?まるで私が暇人みたいじゃないか。正直、暇な時もあるけど。


響「私も別に暇じゃないんだけど」


友人「いいのいいの、そんぐらいなんとかなるって笑」


響「お断りさせてください」


友人「だ め で す」


響「どうしても?」


友人「どうしても」


しょうがない。こうなってしまっては埒が明かない。ここは大人しく私が折れることにしよう。


響「わかった。調べることにするよ」


友人「マジで!?やったー!」


響「ただし、何か奢ってよ」


友人「えー、じゃあ、駅前のどっかで昼ごはんでも奢るわ」


響「絶対だから」


私は、結局このことを調べることになった。昼食を奢るだけでいいのだから、私はだいぶちょろい人間なのだろう。

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