第5話大腸カメラ

長谷川は、朝の9時に病院に到着して、検査着に着替えた。

前夜、下剤を飲んだが効果が無かった。

部屋へ案内されて、下剤を1.5リットル、少しずつ飲むようにと言われた。

部屋には同じ検査であろう患者が、ビニールパックに入っている下痢を紙コップで飲んでいる。頻繁にトイレに向かう。

長谷川も、下痢を飲んだ。

ねっとりとした液体に運動飲料水の味が付いていた。

飲み辛い。


こんなモノが下剤なのだろうか?と、長谷川は余裕で下剤を飲んでみる。

20分後、猛烈に腹痛を感じて、トイレに走った。

戻って来た時は、脂汗をかいていた。

何やら、便が透明になるまで下剤を飲み続けなければいけないらしい。

それから、何度もトイレに走る。

「ハァハァ、下剤ってのはこんなに威力を発揮するのか?」

と、トイレで呟いた。便の色が透明になった。

間もなく、大腸カメラだ。


医師が肛門からカメラを入れ始めた。

「うぅ〜」

と、長谷川は唸る。空気を入れながらカメラを挿入するので、腹がパンパン。また、下剤の威力で液体が出るが、それを吸引しながら、カメラを挿入し続ける。

「目立って、潰瘍もないようですし、いわゆる過敏性腸症候群ですね」

と、医師は言った。


長谷川は安心して、病院のコンビニで弁当を買い、広場の東屋でお茶とコンビニ弁当を食べた。

すると、肛門から空気が出てくる。しょうが無い。

と、食べ進めると、

「あっ、出ちゃった」

と、長谷川は中身を漏らした。それでも、弁当を食べきり、バスで帰宅した。もちろん、座席には座らず立ったままで。

シャワーを浴びた。スラックスは洗濯機に放り込んだ。


竹内にLINEした。

【大腸カメラで、異常なし。過敏性腸症候群だってさ】

と、長谷川は缶ビールを飲んでいたら、直ぐに返信が来た。

【あまり、飲み過ぎないで下さい。来週の週末に話しがあります】

【何の?】

【秘密です】


長谷川は、ケッと言ってスマホをソファーに投げた。

今夜は、マッカランだな?

と、冷蔵庫からチーズと明太子を取り出し、マッカランをロックで飲んだ。

「アイツ、何が言いたいんだろ?今、言えば良いのに。……まさか、金か?オレは、飲み代以外は貯金してるけど、しょうが無い。金の時はひと肌脱いでやろう」

と、言いながら、マッカランを飲み続けソファーに横になると、さすがに検査疲れで、そのまま寝落ちした。

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