テーオーロイヤルの思い出
テーオーロイヤル(T O Royal)
意味:冠名+王にふさわしい
父リオンディーズ
母メイショウオウヒ
母父マンハッタンカフェ
クロス
サンデーサイレンス 18.75% 4×3
Mr. Prospector 9.38% 4×5
Hail to Reason 6.25% 5×5
デビュー戦は阪神芝1600m良、鞍上幸英明騎手、この馬を初めて見たのはこのレースでした。
全く違う馬を見ようとレースを見ていたのですが、白い紙にある黒い一点の様に、ある一頭が妙に視界に入り込んできたのを覚えています。それがテーオーロイヤルとのある種の出会いです。レース後、急いで出馬表を開いて先程の強烈に印象に残った馬の名前を調べた思い出があります。
今思えば幸運だったなと感じます。
そして、理由なくテーオーロイヤルが目に入った訳ではなく、走るフォームが非常に格好良いというのがあります。頭の低い地を這うような走りであり、周囲の馬より一段低いフォームは見る人を引き付けるでしょう。特にコーナー終わりの加速する段階でグッと首が下がるのが最高に格好良い馬です。
肝心のレース結果ですが、後方外目に位置し、コーナー入りでジワジワとポジションを上げ、直線で追い込みを図り3着となりました。
ニ戦目は中京芝1600m良、鞍上は引き続いて幸英明騎手。前走同様に後ろでレースを進めますが、直線では手応えなく9着。ですが、スタミナ切れで沈んでいる訳ではなくジリジリと伸びていた為、短距離戦における単純なスピード能力が足りないという印象でした。
このあたりで距離が足りないのではないかという声が聞かれたと記憶しています。
父リオンディーズは距離のもつキングカメハメハ産駒であり、特に母父に菊花賞馬マンハッタンカフェがいる血統の為、距離延長を試す方が良いという意見が多かったと思います。
三戦目は阪神芝2000m稍重、ここで鞍上が菱田裕二騎手に変更。以降の主戦騎手となります。騎手交代に距離延長という事もあり、試金石となるレースでした。スタート後すぐに内に入れると今回も後方からの競馬を展開しました。窮屈な位置からの仕掛けでしたが、直線では差足を伸ばして4着。やはりスタミナがあるなというレースであり、ステイヤーの可能性が高いと目された内容だったと思います。
四戦目は阪神芝2400m良、鞍上菱田裕二騎手。前走の好走もあり更に距離を延長、スタミナ勝負という事で勝ち上がり期待の一戦となりました。
ゲートが開くと長距離戦のセオリー通りに内でロスなく周回していきます。コーナーで他馬が捲くっていく中、鞍上は前の馬につける形で直線に侵入。無理に追い出さずに進路が空くのを待ち、空いた空間に鋭く差し込んでから促して一気に先頭を奪いました。外からやってくる馬の追撃を許さず、そのままゴール板を通過しました。
前走の事もあってか、位置取りや追い出しの仕方が非常に鮮やかなレースでした。
五戦目は東京芝良2400mG2テレビ東京杯青葉賞、鞍上菱田裕二騎手。勝ち上がり距離で初重賞に挑みました。
レースが始まると、スタートの他馬がポジションを取る為に先行する中、テーオーロイヤルは後方に陣取ります。この際、鞍上は手綱を引いてスタートの早くないテーオーロイヤルが無駄な脚を使わ無い様になだめていました。
道中では外に位置しながら後方から前の馬を交わして徐々にポジションを上げていました。コーナー手前では外目そのまま大きく外を回して直線真ん中から差し切りを図ります。ジリジリとにじり寄る着実な末脚を見せ、4着となりました。
これまでとは打って変わって内ではなく、外を周るロスは大きいが、囲まれない競馬を展開しました。直線では先団馬が垂れて渋滞を起こすのを横目にストライドを伸ばしており、戦術がハマったレースでした。
初重賞という大舞台で、テーオーロイヤルという馬の長所を存分に発揮した鞍上の手腕は素晴らしいものでした。
また、それなりの長丁場のレースで距離的に不利な外を終始周り、直線の侵入においても大回りをしたにも関わらず、直線でバテる事なく末脚を持続させていたスタミナは一級品であると如実に示す内容でした。
六戦目は中京芝2200m良、鞍上菱田裕二騎手。今回はスタートが決まり、前のいい位置に付いたと思えば馬なりでゆっくりと後退、他馬に譲る形でいつもの後方からのレースとなりました。そのままレースは流れ、直線では荒れた内を嫌ったのか他馬が外にいく中、自然と進路の空いたテーオーロイヤルはスムーズに追い出しての1着。重賞4着らしい危なげない勝利でした。
スピードはそこそこだがスタミナのある馬は逃げ戦術のイメージがあるので、少し腑に落ちないレースではありました。単純に戦術ミスとかではなく、放牧明けで無理をさせずに馬に任せた結果だと思います。
七戦目は阪神芝2400m良、鞍上菱田裕二騎手。前走同様にスタートが決まり、後方かと思えば今回はそのまま先頭で逃げの一手を打ちました。2馬身程度差をつけていましたが、隊列が決まる頃には1馬身程度となり、それが続きます。直線では外の馬につけられますが、二の足を繰り出して振り切り、前走引きづつき勝利という結果でした。
これまでの後方からペースを維持して垂れた馬を交わしつつ、直線ではジワジワ差を詰めるという競馬でしたが、今回は一変、逃げを披露しました。少頭数でハナを主張する馬がおらず、内枠でスタートの決まったテーオーロイヤルが自然と逃げる形となったものの、後の競馬を思えば一つの転換点だったと振り返ります。
八戦目は阪神芝2400m良、鞍上菱田裕二騎手。前走の事もあってかスタート後、鞍上は促し促しでポジションを上げ、先団に取り付きます。大逃げを打った馬とそれに続いた馬2頭が四から五馬身づつ空けて3頭連なりでレースを作る中、先団で内に一頭抱える形でテーオーロイヤルはレースを進めていきます。直線では開けた場所から上り最速の末脚で一気に伸びて、破竹の三連勝となりました。
九戦目は東京3400mG3ダイヤモンドステークス、鞍上は言わずもがな菱田裕二騎手。明らかなステイヤーであった為、3000mを超えるこの舞台は非常に期待度の高い一線でした。
ゲートが開くと無理に追わずにゆっくりと形成されつつある先団に混じり、先団二列目で3頭横に並んだ真ん中に位置しました。前後左右を蓋をされる形であったものの、レース中盤にかけて隊列は縦長へと移行していきました。
最終コーナーでは前の馬を交わして、逃げ馬を捉えにかかります。直線半ばで逃げ馬を捉えて勢いそのまま後方集団を置き去りに重賞初制覇を果たしました。
十戦目は阪神芝稍重3200mG1天皇賞春、鞍上菱田裕二騎手。初のG1参戦。
伝統の一戦においてタイトルホルダー、ディープボンド等など、錚々たるメンバーが揃いました。
ゲートが開くと全馬スムーズにスタートを切ったと思ったら、シルヴァーソニックが既に鞍上が消え去った状態でした。タイトルホルダーが逃げ、テーオーロイヤルは先団の前につけました。その後、少しずつ隊列の距離が縮まり、最後のコーナーに入ります。ここでテーオーロイヤルは仕掛けて外から先頭タイトルホルダーに迫り、その後ろにはディープボンドも脚を伸ばして来ました。
直線に入るとタイトルホルダーはそのままペースを緩めずに着差を広げて行きます。二番手にいたテーオーロイヤルですが、直線半ばでディープボンドに交わされて3着となりました。
このレースに関しては相手が悪かった。この一言に尽きると思います。むしろ、強力な古馬相手によく3着に来たと言うべきでしょう。
なお、シルヴァーソニックと鞍上川田将雅騎手は無事でした。正直、シルヴァーソニックの落馬と、空馬のはずが人が操縦してるのかという走りをしたというインパクトが強すぎたレースです。大事なかったので、当時は透明な川田が乗ってるとかなんとかネタにされてました。
真面目な話をすると、空馬は制御不能なので非常に危険です。今回はたまたま何事もなかった、ただそれだけです。
十一戦目は中山芝良2200mG2産経賞オールカマー、鞍上はいつもの菱田裕二騎手。
長距離戦線で戦っていたため、急な中距離路線は色々言われた覚えがあります。一応、中距離でも勝ってはいますが強い相手のいない中での結果であり、そもそもスピード自体はあまりないという評価だったので、かなり懐疑的な声が多かったと思います。
ゲートが開くと外枠だったため、促して内に誘導しますが内の馬も譲らずにコーナー手前で内に収まりました。戦闘から1馬身づつ並んでテーオーロイヤルは四五番手を追走。いつもと同じくコーナーで外を周って直線へと侵入します。直線では垂れる事なく脚を使いますが、ほとんど位置が動かずに5着となりました。
スタミナはあるが、やはり中距離に必要なスピードが足りない。そういうレースでした。
十二戦目は東京芝良2500mG2アルゼンチン共和国杯、鞍上菱田裕二騎手。
前走より少し伸ばしての一戦。まだ短いのではというのと、消耗戦を仕掛けてワンチャンみたいな感じの声が聞こえてきたかと思います。
若干モサッとしたスタートの上、若干ヨレた微妙なスタートと共にテーオーロイヤルのレースが始まりました。内枠で前も空いていたものの、積極的には行かずに先団三四頭目程度の所に収まります。内で包まれた状態でコーナーを周り、直線に入りますが、そこで垂れてきた逃げ馬キングオブドラゴンがヨレて進路が狭くなる形に。すぐに体勢を立て直して最内から追い上げを図りますが、ゴタゴタした影響でイマイチ伸びずに6着となりました。
あとは距離がね。
十三戦目は東京芝良2400mG1ジャパンカップ、鞍上菱田裕二騎手。あのさ、距離。
正直、言うことはないです。いつもの先行策で直線で位置が変わらずに14着。勝ち馬のヴェラアズールの末脚がわけわからんレベルでやばかったという話の方がよっぽど話せます。
普通、あのレースは最後の直線でシャフリヤールかヴェルトライゼンデの叩き合いが繰り広げられ、鼻差でどっちだ。ってなってビデオ判定って思うじゃないですか。それがその2頭の間を割って1馬身差勝利ですからね。あれはビビった。
流石にこれで長距離戦線に舞い戻るだろうと思って、天皇賞春のリベンジを楽しみにしていた所、テーオーロイヤル骨折の報が耳に飛び込んできました。
めちゃくちゃ焦りましたが、夏頃復帰を目指して療養すると聞いてひとまず安堵した覚えがあります。
十四戦目は東京芝良2500mG2アルゼンチン共和国杯、鞍上浜中俊騎手。復帰明け初戦は短めの距離で様子見という感じでした。残念ながら主戦の菱田裕二騎手は落馬負傷のため乗り替わり。とにかく、骨折明けなので無理なくという一戦でした。
ゲートが開くと前には行かずに流れに任せて中段外に位置取り、レースを進めて行きます。コーナーを周りきった時には外を周った事もあり進路は開けていました。直線では激しく追う事はせず、10着となりました。
まずは無事に完走したので良かったという感じです。当たりの柔らかい浜中俊騎手の採用とレース内容も次戦を見据えたものと推測でき、個人的に特に言う事のないレースです。
十五戦目は中山芝良3600mG2ステイヤーズステークス、鞍上浜中俊騎手。
久しぶりの長距離戦で仕掛けてきたなという印象でした。とはいっても復帰ニ戦目で多少の不安もありました。
スタート後、前に行った逃げ馬アイアンバローズの後ろに空間が空き、テーオーロイヤルはそこへスムーズに入り込み、先団の好位置につけます。
アイアンバローズとアフリカンゴールドの2頭が大きく逃げる中、鞍上は焦ることなくレースを進めて直線に入ります。
直線に入ると先団を形成していた馬を次々と交わしますが、逃げたアイアンバローズが止まらずに2着となりました。
十六戦目は東京芝良3200mG3ダイヤモンドステークス、鞍上は帰ってきた菱田裕二騎手。
負傷から復帰した菱田裕二騎手がようやく帰ってきてコンビ復活の一戦。一度勝利した舞台で復帰後最初の黒星を狙いました。
ゆっくりとしたスタートから中段外に取り付き、5番手を追走します。レースは終始隊列のあまり変化しない展開。変化が起きたのはやはりコーナー、縦長の隊列から直線入り口で横並びに。
一年数ヶ月ぶりにその背に乗せた菱田裕二騎手の手綱捌きに応え、テーオーロイヤルがグッと首を下げて加速。内で食い下がるサリエラを寄せ付けずに勝利を得ました。
十七戦目は阪神芝稍重3000mG2阪神大賞典、鞍上菱田裕二騎手。
前走でG2を制覇したりと勢いに乗るブローザホーン、天皇賞春でテーオーロイヤルを差し切り2着を奪ったディープボンドとG1前哨戦に相応しい面々が揃い、曇天の中、次々と出走体勢を整えていきます。
ゲートが開き、3分を超える長い戦いが始まりました。芝の影響もあってかスプリント戦では見られない、全馬、ややじわっとしたスタート。
内枠ディアスティマとジャンカズマの2頭がスタートの勢いそのままに先行争いを繰り広げ、後続を突き放します。
中枠にいたテーオーロイヤルが逃げ馬に競り合おうとしますが、菱田騎手は手綱を短く持ってペースを落として自身の競馬へとテーオーロイヤルを誘導します。内で2頭逃げたので、そのまま内に入って先頭2頭を見る形に。
阪神の大回りを曲がりながら前との距離を3馬身、2馬身と縮めていきます。直線に侵入時には前2頭の間が空き、一気に先頭を奪い去りました。そこからも止まることはなく、着差をグングン広げてまだ止まらない。周りには誰もいない、ただテーオーロイヤルと菱田裕二騎手の一頭と一人だけがターフに浮かんでいました。
2着にはワープスピード鞍上川田将雅騎手。
3着にはブローザホーン鞍上菅原明騎手。
直線からゴール板を過ぎ去ってしばらくはテーオーロイヤルただ一頭だけが、私の目に映っていました。
競馬界には人馬一体と言うべき馬と騎手がいますが、菱田裕二騎手とテーオーロイヤルはまさにその一つだと言えるでしょう。どちらかが主導している訳ではなく、常に噛み合った違和感のない関係になっていると感じます。一つの存在感、体系とも捉えられると思います。
人馬ともに怪我による戦線離脱もあった中、また共に走ってくれたことは感慨深いです。
テーオーロイヤルに関してですが、460kg前後と小柄です。シルエットも細身で脚が長いのも合わさってスラッとした印象を与えます。キ甲に幅のある長駆短腹で分かりやすい長距離馬という雰囲気。
切れるタイプではない、全身を使ったストライドの大きい走りも相まって古臭いステイヤーという印象を受けます。有名所で言えばライスシャワーの様な。
初めて見たときの影響もあるだろうが、特に走る姿が良い馬だと思っている。
殊更、首の使い方が目を引く。とにかく低い、首を前へ前へと伸ばして下げる。首と背中のラインが一直線になるくらい首の位置が低くなる。長駆短腹特有の全身のバネを使って体が沈み込む様に走るのも相まって、地を這うような走りをする。これが抜群に格好良い。
成長と共にしっかりしてきてはいるが基本的に胴が細く脚の長い体型で、常歩だと地面から胴がかなり離れて見える。そのため、走るときの低さがなお目立つ。
長丁場のレースでテーオーロイヤルは無類の強さだと私は思っています。タイトルホルダーにだって勝ってた。今でもそう思っています。ただ若かっただけだと。
世代世代には芝ダートや距離によって覇者というべき存在がいると思います。
その名の通り、この世代における長距離戦の王にテーオーロイヤルはふさわしい存在になると思っています。
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