第38話 家なき子【ざまぁ】
――――【絵里花目線】
ガジガジガジッ。
気づいたら、はしたないと思って止めたはずの親指の爪を噛むというくせが出てしまっていた。
それもこれも優一のせいなんだから!
優一の奴、私がせっかく寄りを戻してあげるって言ったのに、断るなんてやっぱりサイテーの男だったんだわ。
パパとママには優一の子って、嘘の報告すれば……だめだわ、生前でもDNA鑑定できちゃう。
ああっ、このままじゃ寮を追い出されて、パパとママの下で暮らさなきゃいけない。
〈渉どこ?〉
〈戻ってきて〉
〈連絡くらいしなさいよ〉
〈スルーすんな!〉
【おかけになった電話をお呼びしましたがお出になりません】
メッセージを送っても既読が付かず、電話しても通じない。渉に赤ちゃんができたって報告しないといけないっていうのに肝心の渉が捕まらなかった。
「はあっ、はあっ、どこ行ったのよ、渉!」
結局自分の足で渉を捜す他なかった。
そうだ!
GPS付き盗聴器を仕込んでたのを忘れてた。
スイッチをオンにするとスマホに表示される渉の居場所。どうやら駅前のファミレスに逃亡しているようで盗聴内容からして女と会っているらしかった。
『た、助けてくれ……花園!』
『えーっ!? 石田くん、わたしのこと太ってるとか、内心馬鹿にしてたこと分かってたんだよ。それを今更助けるとかって、あり得ないんじゃない?』
『い、いや、おまえ、中学の頃はオレのこと、好きだったんだよな? そうだよな? 今、オレストーカーに追われてるんだよ。だから花園が彼女の振りをしてくれたら、助かるんだって。なんならオレとマジで付き合ってやってもいいんだ』
『は? それ本気で言ってるの?』
『もちろんだ。おまえって、中学のときはデブで見るに耐えなかったが、今はめちゃくちゃかわいいからさ、オレの彼女にしてやってもいいかなって』
『いいよ』
『マジか! なら今からヤろう』
『意味が違う! いいよ、もうそういうの、ってこと。石田くんは猿みたいな男で女の子とヤりたいだけの馬鹿だってこと、わたし知ってるから』
『は?』
『石田くんは知ってるでしょ? 白川優一くんって子。わたし、志穂の紹介で彼にダイエット方法を教えてもらったんだ。彼のおかげでモテるようになったから、石田くんみたいに中身のない男の子と付き合う必要とかないんだ』
渉の今までの行動がブーメラン過ぎて、笑えてくる。
「それにストーカーに追われてる男の子なんて、リスキー過ぎて付き合うとかあり得ないし。じゃあね、石田くん」
「待てよ、誰が奢るって言った? てめえが頼んだ分くらい払って帰れよ」
ちょうど私がファミレスへ到着すると渉と私よりも数段劣る女となにか詰まらないことで揉めていた。
「渉~! ここにいたんだ。捜したんだよ」
「げっ!? なんで絵里花がここに?」
「じゃ、わたし帰るから。かわいいかわいい彼女さんとお幸せにね」
「は、花園ぉぉぉ~!!! 待ってくれ!」
女はバンとテーブルに小銭を叩きつけるように置いて、帰ってしまった。
「邪魔者は消えたみたいだし、帰ってシよっ♡」
「い、いやだぁぁぁぁ……」
最近、S気の強かった渉を種付け逆プレスしながら、えっちしてるとおほ、おほって声を出し始めて喘ぐものだから、いじめ甲斐を感じてきちゃってる。
気絶しちゃった渉に貞操リングをはめて、錠前で鍵をかければ……私以外に浮気なんてできないよねっ♡
――――絵里花の実家。
私は社員寮を追い出され、実家へ戻ってきたのだけど……、
「絵里花は日本に残るのか?」
「いっしょに行きましょ」
「いやいやいや! 私は日本に残るの! なんで海外になんていかないとならないの?」
「母さん、仕方ない。絵里花は残りたいみたいだ……」
憎たらしいことに優一の父親にまんまとはめられたパパは社長の座を追われ、海外に移住を決めたらしい。
だけど私は慣れ親しんだ日本を離れたくなかった。渉もいることだし、私を裏切り酷いことした優一に復讐してもいないんだから。
――――数日後。
両親が日本を経って部屋は好き勝手に使えると思っていたら、見慣れないお客が家を訪れていた。
『済みません、佐々木英敏さんはご在宅でしょうか?』
「いえ、父は不在ですけど。なにか?」
『失礼いたしました。私、警視庁生活経済課の吉田と申します。英敏さんに特別背任罪の容疑がかかっておりまして、家宅捜索を行いに参りました』
「は?」
インターホン越しにスーツ姿の男性と話していたら、パパが犯罪者だと言われ呆然となってしまう。リビングのガラス戸にはすでにスーツ姿の者たちに囲まれており、腰を抜かしそうになった。
『ドアを開けてください。開けてもらえないと強制的に開けることになりますよ。捜査令状もありますので』
ドラマなんかで見る紙切れ一枚をひらひらさせて、私に解錠を迫ってくる刑事と思しき人物。
「いま、開けるから家を壊さないで!」
仕方なく家の鍵を開けると刑事たちが家になだれ込んんでくる。
「佐々木英敏さんのご息女でしたか……英敏さんにはバルキューバの代表取締役の際に携帯事業で親族の経営する会社へ融通を図ったこと、及び保養所及び社員寮に家族を住まわせた容疑がかかっております」
「パパは……父は社長なんですよ、それくらい許されて当然なんじゃない?」
「残念ながらそれは許されません。ちなみにこちらのお宅もバルキューバ社の保養所ということになってまして、返還要求が出ております」
「は?」
刑事たちは必要な物を応酬していったのだけど、そのあとが問題だった。
「ということで絵里花お嬢さま、申し訳ないのですが保養所をご返還願います」
「ちょ、ちょ、ちょっと! 冗談よね? 私の家なのよ、ここは!」
「いえ、こちらは警視庁の方がご説明された通り、バルキューバの財産で、佐々木社長の個人資産ではありません。なので本日付けで退去願います。ちなみに調度品なども会社のお金で購入されてますので……」
私は最低限の荷物を持たされ、家を追い出されてしまった。
どうすんのよ、これ……。
―――――――――あとがき――――――――――
我が儘が過ぎて親にも捨てられた形になってしまった絵里花w 明日からは絵里花と渉の河原でのガチキャン生活が始まるかも( ´艸`)
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