第30話 幼馴染の悪行がバレる
俺が石田さんたちの突然の来訪に驚いていると希美がすーっと俺の脇をすり抜けて、彼女たちとあいさつをしていた。
「ククク……なにを驚いておるのだ盟友。これが我が聖杯の力だ」
俺にスマホを見せ、ドヤる希美だったが妹もご多分に漏れずルキューバフォンというのが我が家の悲哀を表している。
しかし、いつの間に石田さんたちとLINE交換してたんだ? 俺も聞いていいか迷っていたのに、やっぱ女子はコミュ力高くてうらやましい。
「我が召喚に応えし淫魔……否、魔界を統べる貴族の令嬢の来訪に我の心は躍っている!」
「いまさっき淫魔って言ってね?」
「言ってましたね。なにかの間違いでしょうか?」
「私は……そんなえっちじゃない……はず……」
「盟友よ、彼女たちの助力を得し今、大ヴィンセントから受けた誤解を解く日を迎えたのだ!」
「おう、父さんにすべてを打ち明けてくるよ」
「待つのだ、そんな一人で大丈夫か?」
「大丈夫だ、問題ある!」
やはり持つべき物は友と妹。
――――リビング。
人数が多くなってしまったため、父さんの部屋に入りきれず、急遽リビングで俺の尋問会が再開されていた。
「初めまして、石田志穂と申します」
「高木いばらだ……です」
「島谷萌です、白川くんにはいつも学校でお世話になっています」
「こほん……あ、白川一磨です。息子がずいぶんとお世話になっているようで……」
個性豊かだが、アイドルユニットかと見紛うばかりの美少女三人を前にして父さんも緊張ぎみなのが手に取るように分かる。
俺だって三人が俺のところに来てくれること自体が不思議でならないんたから、それもしょうがない。
「一磨さ~ん」
「あ、いやなんでもない。早速だがキミたちに訊ねたいことがあるんだ」
父さんがキラキラした石田さんたちに心を奪われてしまっていると母さんが無表情で呼びかけると我に返ったようだ。
父さんの前のソファーに座っている石田さんたちに聞き取りをしようとしたときだった。
「待って、お父さん、これ……お兄ちゃんが絵里花ちゃんにいじめられてた証拠だよ」
「希美!?」
希美はスマホの画面の再生ボタンを押すと、流れてくる罵声。
『ホント、キモい部屋。こんないい歳して、フィギュア作りが趣味とか勘弁してもらいたいわね』
『……いや趣味と実益を兼ねてるつもりなんだけど』
『私に口応えしないでよ! 優一のくせに』
ごっ♪
『くっ……』
『あはは、あんたみたいなキモオタでも痛覚があるんだ、ウケる』
音声だけで少し籠もった音だったので希美は壁から漏れる俺と絵里花の声を拾ってくれてたんだろう。
役立たずだとか言っておいて、一番有能じゃないか……。
俺が驚いて希美の方を見るとえっへんと腰に手を当て、ドヤ顔で笑っていたがまぶたには滴が浮かんでいた。
「あ、あああ……私はなんて愚かだったんだ……」
「優くん……なぜ早く言ってくれなかったの?」
希美のスマホからはいくつもの音声ファイルが再生されてゆき、十数件聞き取ったところで父さんは左右の髪と頭皮の間に両手で指を差し込み、頭を抱えた。
母さんは口に手を当て、とにかく義娘になるはずだった絵里花の言動にびっくりしているようだった。
それだけに止まらず、
「動画もあるから……」
スマホを操作し終えると怖ず怖ずと父さんたちに差し出した。動画を流すまえに希美は俺に耳打ちして確認をちゃんと取るという配慮を見せてくれ、俺は洗いざらい絵里花にされた侮辱をみんなに見てもらう。
『いやだ……俺はそんな趣味はない』
『優一、あんたってば立場ってもんを分かってる? 私に口答えすれば、あんたの両親が経営してる会社との取引なんていつでも切れるんだからね。分かったらさっさっと私の指を舐めなさい』
俺がもっとも苦痛で屈辱的だったのが、絵里花の足の指を舐めることを強要されたことだった。
両親はもちろんのこと、うちで頑張ってくれている従業員の人たちが路頭に迷うとか考えたら、絵里花に従う他なかった。
『ホントに女の足を舐めるとか、マジでキモ~い』
左足の親指を舐めていると絵里花はポンと俺の顔の上に右足を置く。俺を人間とは思わずにマッサージ機能付きのオットマンとでも思ってるんだろうか……。
「こんな酷いことするなんて……」
「おかしい奴だと思ってたが、狂ってやがる!」
「信じられません、今からでも文句を言ってきてやりましょうか」
パワハラ、モラハラ、DV……希美の撮った動画は所々画面が揺れていたが、恐怖の余り手が震えていたことが容易に想像できた。
「なぜこんなことができるのか分からないよ」
「うわぁぁ、トラウマレベルじゃねえか……」
「こんな拷問を堪え抜いた白川くんは偉いです!」
石田さんたちも絵里花の所業に絶句している。
俺は本当に良い妹を持ったと思う。
希美は絵里花を止めに入れなかったことを悔いていたんだ……。
絵里花の悪行の数々が撮された動画を見た父さんは額に手をやると天を仰いだ。
「なにも優一のことを察してやれなかった私を許して欲しい。絵里花さんは優一に依存していて、優一もそんな絵里花さんの世話を焼くのを楽しんでいたと誤解していた……」
「父さんはなにも悪くないよ」
「優一、この件なんだがな、父さんに任せてくれないか? 私も佐々木社長には私も思うところがあったからな」
「それは構わないけど……どうするの?」
「まあ、大人には大人のやり方があるから、任せておきなさい」
父さんはじーっと壁にかかったカレンダーを見て、口角を上げていた。今週末にあるグッドデザイン受賞のパーティーの日を見据えて。
俺は知っている。
俺の父さんがこの仕草をするときは必ず勝ちフラグであるということを……。
―――――――――あとがき――――――――――
絵里花終了のお知らせ。白川パパがアップを始めましたwww 絵里花は白川パパの会社をただの下請けぐらいにしか思ってませんが、どうなるんでしょうね? 分別ごみに出される
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