第29話 倍返しざまぁ待ったなしの幼馴染
――――【絵里花目線】(写真が渡る前)
登校前に渉が来たけど……。
「渉~、ちゃんと私の部屋掃除して……なにこれ? 全然進んでないじゃない」
「ああ? なんでオレが絵里花の部屋の掃除なんかしなきゃなんねえんだよ。それくらい自分でやれよ」
優一が来なくなって三ヶ月ほど過ぎた頃だった。バルキューバの社長令嬢という特権で社員寮の一角を使用し、一人暮らしを謳歌していたけど、家事のまったくできず、部屋にはごみ袋がどんどん増えていくばかり。
「いいから私の部屋を使うんなら、ごみくらい捨ててきてよ!」
「ああ? つか絵里花……おまえ、ごみの分別してねえだろ。んなもん持っていかねえぞ」
「私の出したごみなのよ、ありがたく持っていきなさいよ」
「オレにんなこと言われても知らねえよ。ごみ屋に言えって」
もうっ! なんでごみの分別なんて決まってんのよ! パパに言って、この街のルールを変えてやるんだから。
それにしても渉の奴……えっち以外は本当に役に立たない男なんだから!
これだったら、優一の方が……。
ううん、なんで今更優一のことなんか気になるのよ。あんなつまらない男といっしょに過ごすとかはっきり言って嫌なのに!
――――学校。
私に盾突いてきた憎たらしい志穂の頬をひっ叩いてやろうと思ったら、優一が庇ってくる。
そんな女のどこがいいのよ!
優一の奴が志穂に向ける目がムカつく!
俺が守ってやるから大丈夫とか……。私にはちっともそんなこと思っていなかったくせに!
「優一のくせに生意気よっ! あんたなんかパパに言いつけてやるんだから、覚悟しておきなさい」
絶対にこの二人はデキてる。優一は志穂の醸し出す「私、かわいそうでしょ?」みたいな雰囲気にコロっとやられたんだわ。
志穂の演技にまんまと騙された優一はいかがわしいことをしたに決まってる。なんて嫌らしい二人なの!
なのに私を責めるとか信じられない!!!
汚らしい手で私を掴む優一に腹が立ってきて、振り解こうとしても、解けないっ!
子どもの頃からキモいフィギュアばっかり作って軟弱なくせに、なんでこんな力が強いのよ!
目いっぱい引っ張ったところでようやく手が解けたらと思ったら……、
「いったぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーいっ!」
手の甲を机の角にぶつけて、激痛が走る。
段々と腫れ上がってきて、これは骨折してるわ!
こんなのワザと手を離した優一に骨折させられたのよ。
私が手を押さえて痛がってるとクラスメートたちはこちらを嘲笑ってくる。
もうっ! こんな肝心なときに渉はどこに行ってるのよ!
渉がいたら、こんな奴らすぐに黙らせてやるのに……。
でも痛みよりも私を罠にはめた優一と志穂と侮辱したクラスメートたちに怒りがこみ上げてくる。
「私が最低ですって? 聞き捨てならないわね」
「マジ最低だよ。絵里花が勝手に渉と寝たなら、白川のことは放っておいてやれよ。それとも何か? 白川のことが惜しくなったとかか?」
「私が優一のことが惜しい? バカバカしい。さすが学園でも下から数えた方が早い高木さんよね」
「あたしはバカかもしんないけど、白川の良さが分かんない絵里花はもっとバカだろ」
「なんですって!?」
クラスメートたちからその通り! と拍手が上がってしまう。
「みんな、ありがとう。だけど絵里花は手を怪我してるみたいだし、それくらいにしておいて」
「白川がそう言うなら仕方ないな」
「ホントはもっと責められてもいいのに。優しい白川くんに感謝しなさいよ」
優一の私に勝ち誇ったような物言いがムカつく!
「なっ!? 私が優一に感謝? ふざけんじゃないわよ。覚えてなさい、今日のところは引き下がってあげるけど、次はないからね」
悔しいけど、手がどんどん痛くなって教室を出て保健室へ行こうとすると、
――――なんつうプライドの高さだよ。
――――プライドだけ高い無能。
――――汚嬢さまだな。
――――不浄さまかもしんないな。
そんな声が後ろから聞こえくる。覚えてなさい、優一……私にこんな屈辱を味合わせたあんたは許さないんだから!
――――
結局折れてなく、ただの打撲だったけど保健の先生にぐるぐるに包帯を巻いてもらったから使えそう。
渉の部屋で見つけたものを持って放課後、優一の父親のところへ向かっていた。
よく分からないけど渉は優一と志穂たちがいちゃつく登下校を撮影していたデータを持っていたので、こっそり抜き取り優一の父親の会社へ行き、見てもらっていた。
うちに比べれたら、小さな小さな会社でみすぼらしいけど、社長令嬢ということでちゃんと会ってくれたことだけは評価一点をあげてもやってもいいかもしれない。
「ううっ……おじさま……優一が酷いんです。私よりもクラスの女の子たちと仲良くしてばかり……もしかしたら優一は彼女たちと不貞行為を……もう私はいらない子なんでしょうか?」
「いや優一に限って、そんなことは……」
私が泣きじゃくるものだから、優一の父親はおろおろしている。
やっぱり身内がかわいいのね、でも……。
私は机にぶつけ、腫れた手を差し出した。
「見てください。私が優一にそのことを問い質したら、私の手をうっ、うっ、怪我の痛みよりも、優一が私に手をあげたことがつらかったんです……」
優一の父親は深いため息をつくと、答えた。
「……絵里花さん、最近うちにいらっしゃらないと思ったら、そういうことだったんですね。この件、優一に問い質してみますので、しばらく待っていただけないでしょうか?」
「お願いします、おじさまだけが頼りなのです……」
すぐさま優一の父親はデスクに置いてある受話器を手に取ると、どこかへ電話をかける。
『取引先と大きなトラブルが起こった。解決のためにすぐに動くので、済まないがあとのことは専務に任したい』
は~、マジちょろい!
目薬で細工した涙を流すと優一の父親はコロッと騙されて、私の言ったことを信用してくれた。
優一もそうだけど、彼の父親もホントお人好しで呆れちゃう。よくそんなお人好しで会社経営なんてできたものよね、あははっ!
でもそのお陰で私たちが得をしてるのよね。
ほんとバカは利用しなきゃ損よね、あはっ!
―――――――――あとがき――――――――――
バカはどっちだよwww と思われた読者さまはフォロー、ご評価お願いいたします。ところで優一の身の潔白はどう晴らすのか、また次回をお楽しみに。
もう幾つ寝るとSEEDフリーダム! 書いてる時点ではまだなんですが、投稿する頃には始まってますね。作者もカクヨムコンが終わったら、観に行きたいです! 結構波乱な展開とのことでドキが胸々しております。
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