第27話 糾弾大会【ざまぁ】

――――【絵里花目線】


 お花を摘みに行き、個室に籠もっていると洗面台の蛇口から流れる水の音と共に話声が聞こえてきた。


 私の取り巻きの子たちの声だ。


「絵里花さん……どうして、優一くんじゃなく石田くんとあんなことをしちゃったんだろ?」

「絵里花は『だってさ、優一って男としての魅力なんてないじゃない。いつも私の犬みたいに後ろをついてくるだけだし』とか言ってたけどね」


 そうそう、あれ……正直鬱陶しいかった~!


 渉といるいまはホントせいせいしてる。


「でもさ、私知ってるんだよね。白川くんは絵里花の知らないところでいっぱい努力してたし、絵里花に一生懸命尽くしてくれてたと思うんだけどなぁ」


「うん、それそれ。うちも白川みたいな彼氏だったらなぁなんて、いつも思うよ。彼氏が言ってたんだけど、白川って一見運動できなさそうに見えるんだけど、他の子のアシストに徹して自分は目立とうとしないらしいんだよね」


「あっそれ聞いたあるよ! この前の球技大会でうちのクラスが優勝できたのも優一くんが相手チームからインターセプトしてサッカー部の男子にアシストしたからだって。その子が言うには『白川は自分でシュートを決められたはずなのに』って首を傾げてたよ」


 えっ? 


 私……そんなこと優一から一言も聞いてないんだけど。それどころか優一は運動音痴だとばっかり……。


「後ろにくっついてるのも、『前は絵里花の目があるから彼女自身がなんとかすると思う。でも後ろは俺が庇わなきゃね』って佐伯と話してなぁ」


 ええっ!?


「絵里花さんのお父さんに頼まれたことをずっと守っていたのになんだか白川くんが不憫に思えてくる」

「だよなぁ……彼女に尽くした挙げ句、捨てられるとか酷い話だよ」


 なにそれ……パパが優一にそんなこと頼んでいたなんて、知らない……。


「それに比べヤリチンの石田ってヤったあと、しばらくしたらその子のこと見向きもしなくなるって噂だからね」

「佐伯くんの幼馴染の西野さんだっけ? 彼女の件は酷かったよね~」


 なにそれ……? 私、渉から何も聞いてないんだけど。


 ガチャッ。


「その話、ホントなの?」

「えっ!?」

「絵里花さん!?」


 私は彼女たちに話を訊くために個室から出ていた。



――――【優一目線】


「私が佐伯の言うことをちゃんと聞いていれば、こんなことには……」

「いや僕も西野の気持ちを考えずに石田が酷い奴だってことばかり言ってしまってたから」


 俺は佐伯とその幼馴染の西野さんと人気の少なくなった購買部横の自販機コーナーに移って話していた。


「あのさ、良かったら昔みたいに名前で呼び合わないか? なんか苗字だとよそよそしいっていうか……」

「う~ん……仕方ないなぁ」


 まだ佐伯と西野さんは付き合うとかそんな話にはなっていないが、石田のせいで喧嘩別れみたいになっていた関係は修復したっぽい。


 佐伯の肩をぽんと叩くと、


「よかったな、佐伯!」

「ありがとう、ありがとう……これも優一のおかげだよ」


 なんか仲直りした二人の邪魔するのも悪いと思い、自販機コーナーから立ち去ろうとすると西野さんが俺を呼び止める。


「白川くん!」

「ん?」


 俺が振り返ると、


「もし佐々木さんのことで何かあったら、私があいつのやってきたこと証言する。だから頑張って!」

「ありがとう、でも俺は絵里花と復縁したりはしないよ、それじゃ邪魔者は消えるとしよう!」


 きょとんと顔を見合わせる佐伯と西野さんを置いて、教室に戻ると怒りの形相を浮かべた絵里花が俺に向かってずかずか歩いてきていた。


「ゆうい……」

「佐々木さん、白川くんになに?」


 すると石田さんが絵里花の前に立ちはだかって、俺の下へ来ることを阻んだ。彼女だけじゃなく、高木さんや島谷さんもそれに呼応している。さらに対絵里花へのバリケードは他のクラスメートたちへも拡大してゆき、完全に進撃の絵里花は立ち往生していた。


「なんなの! 私はあんたたちになんて用はないの。優一に話があるんだから、そこをどきなさい」

「優一くんは佐々木さんと話なんてしたくないと思う。そっとしておいてあげて」


 絵里花は両手を広げて絶対に通さないといった意志を示している石田さんに呆れ、首を左右に振ったあと答えた。


「あなたね……知らないから教えてあげる。優一は私の許婚なのよ。私が渉と寝たことぐらい、うちと優一の家同士の力関係から考えたら簡単に揉み消せるんだから!」


 絵里花が勝ち誇って腕組みしながら、ドヤ顔で石田さんに言い放つが、石田さんも一歩も退かない。


「私は家のことなんて知らない。けど少しも優一くんのことを考えないあなたは最低の人間だってことくらい分かる」


 俺は絵里花の性格から考えて、ただでは済まないと思い、二人の仲裁に入ろうとバリケードをかき分けて、最前列へと出たときだった。


 絵里花の振り上げた平手が石田さんを襲う。


 パシッ!


「絵里花が俺を叩くのはいい。だけど他の女の子に危害を加えるのは見過ごせないな」


 俺は石田さんの頬を打とうとしてた絵里花の手首を掴み、制止していた。


「優一のくせに生意気よっ! あんたなんかパパに言いつけてやるんだから、覚悟しておきなさい」


 絵里花はぶんと腕を振って俺の掴みを強引に振り解いたが……、


「いったぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーいっ!」


 急に解いたために力が一気に開放されて、絵里花は机の門に思い切り手の甲をぶつけて、涙目になっていた。


「これって暴行よ! みんなも見てたでしょ? 優一が私に手をあげたの。見て! どんどん腫れてきてる……骨折してるわ」


「あ~佐々木、残念なお知らせだ。おまえの行動一部始終を撮ってるから。言質も暴行未遂もばっちり収録済みな」

「私もです☆キラッ」


 高木さんに続いて、島谷さんはキラリと同じくおでこにピースサインを掲げるポーズを取り、絵里花を煽る。俺が絵里花に苦労させられていたことを知ってか、高木さんと島谷さんは忖度そんたくしてくれていたのだ。


「なんですって!?」


 絵里花が驚いたときには時すでに遅し。


 ――――おれ、佐々木さんのイメージ変わった。


 ――――おまゆう?


 ――――浮気を権力でもみ消すの?


 ――――最低女じゃん!


 クラスメートたちは絵里花の格付けを最低にランキングしようとしていた。


―――――――――あとがき――――――――――

優一は有力な証言者を得た! どんどん追い詰められてゆくクズ男。クズ男のクズっぷりに絵里花が闇落ちして、ヤンデレ化して二人まとめて汚物は消毒だぁ! をご希望の読者さまはフォロー、ご評価お願いいたします。


いま気づいたんですが、めちゃくちゃ21日の投稿ミスっとる(゚Д゚;) 仕方ない。作者、「関係ない、行け」いたします(≧▽≦)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る