第26話 間男フルボッコ【ざまぁ】

――――【渉目線】


 長かった二週間の停学が明け、オレはようやく学校へ行くことになったんだが、隣にいる奴のせいで憂鬱ゆううつになってしまう。


「ちょっと、渉。私の話聞いてるの? スマホばっか見てないで聞いてったらぁ」

「ああ? ちゃんと聞いてるだろ……どうせ動画の登録者数が減っただか、増えただか……」

「違う! フォロワーよ、フォロワー!」


 家でゴロゴロしてると絵里花が押しかけてきて、休まる暇もねえでやんの。おまけに最近、オレの彼女面してきてマジでうざくなってきた。


「なに見てんの? まさか他の女にLINE送ったりしてないでしょうね」

「見んなよ、野郎にしか送ってねえよ」


 絵里花はオレの思ってる以上に重たい女で、ヤリ飽きてきたこともあり、元カノへメッセージを送ろうとしていた矢先に目ざとくオレの邪魔をしてきやがる。


 まさかこいつ……地雷女とかじゃねえよな?


 もしかして、オレは白川にまんまとはめられたって……ことはないよな。



 まあ絵里花はオレにぞっこんだからまだ許せる範囲ではある。そんなことを思いながら二人で教室へ行くと絵里花がオレの席を指差して、魚みてえに口をパクパクさせていた。


「渉……あれ……」

「ん? なんなんだよ、これ……」


 オレが確認しに机に向かうと、その上にはおびただしい数の落書きがされてあった。


 寝取り野郎


 ゴミは死ねよ


 いじめ ダメ ゼッタイ


 チ○カスwww


「誰だ! オレが停学中なのをいいことにガキみてえにしょうもない落書きをしやがったバカは! 文句があんなら出てこい! オレが相手してやるよ」


 落書きだらけになってしまった机を台パンしながら叫んでやったが……、



 しーん。



 一瞬静まり返ったものの、クラスメートたちはまたオレのことなど無視して談笑を再開する。


 だが意外な奴から声がかかった。

 

「誰なんだよ、これはちょっとやりすぎだって。俺はまったく気にしてないから」

「しら……かわ……、おま……」


 みんなに訴えるように落書きの件を問い質していたのだ。


 だが白川の行動にオレは無性に腹が立ってくる。


 そりゃそうだ。これはすべて白川の自作自演に決まってる。オレがいない間に落書きをして、オレを庇うことで周囲からのポイントをせしめようとする汚ねえやり口だ!


「白川ぁぁぁーーーーーっ! てめえ、自作自演なんてセコい真似してんじゃねえぞ、ゴラァァァ!」


 オレは白川に駆け寄り、ブレザーの襟を掴もうと手を伸ばす。


 パシッ!


 白川はオレの手を払い、言い放つ。


「止めてよね、俺が石田に敵うはずないんだから」


 へ?


 どういうことだ?


 普通逆だろ?


 オレが白川の物言いに混乱しているとクラスの男子たちが集まってきて、オレを後ろから羽交い締めにした。


「止めろ! オレはこいつをぶん殴らねえと気が収まらねえ」


 オレが押さえられているのをいいことに、軟弱な白川が言い放った。


「石田……停学明けからのまた停学なんて、卒業できなくなるって」



 ぷっ! プー、クスクス……。



 ――――停学コンボ、草。


 ――――スマホの割引かよ。


 ――――停学、定額……ぷっ!


 ――――自称オレTUEEE停学王だな。



 白川が見え透いた心配を口にするとオレを押さえていた男子やそれを見ていた女子から、このオレを嘲笑うかのような声が漏れる。


「みんな、止めろって。これ以上悪口を言ったら石田がかわいそうだ。絵里花が石田に寝取られたのは俺に男としての魅力がなかっただけなんだから……」


 ははは! こいつはおもしれえ!


 白川が自分からオレより劣ってることを認めやがった!


 だがクラスメートたちは違った……。


「白川くん、聖人すぎない?」

「すぐに暴力に訴える石田よりかっこいい!」

「ちょっとやりすぎた、謝ってくる」


 オレの机に落書きをしたクラスメートたちは名乗り出てきたのはいいものの、何故か白川に頭を下げながら、謝罪していた。


 その中に白川が親しくしている佐伯がいて、罰が悪そうに白川の前へ歩み出る。オレの前ではなくだ!!!


「優一……ごめん。優一のこともあったし、こいつにずっと好きだった幼馴染が奪われた腹いせについ出来心でやってしまったんだ……」

「そうだったのか、俺のことはいいんだ。それよりもつらかったな」


「ううっ、ありがとう、優一」

「それにほら」


 佐伯は白川の見え透いた優しさに感極まったのか、泣いてしまうが白川が指差した方向には……、



「心美っ!?」



 オレが恋愛相談に乗るふりをして、予行演習を謳い遊びでつまみ食いした女が教室のドアの前に立っていた。


「おい、心美。ここには来るなって……」

「……」


 佐伯の姿を見つけるとオレを無視して、泣きべそかいてる佐伯のところへゆく。


「いまさらなんだけど私……この男に騙されてた。ちゃんと佐伯に向き合えてたら、どんなに良かったか……」

「いや僕が心美に気持ちを伝えられなかったのが悪い」


 集まったクラスメートたちはもう付き合っちゃいないよ、といった雰囲気で二人を温かく見守っている。


 オレはだんだんムカついてきて、言ってやった。


「おまえら! なんで白川に謝ってんだよ。まずオレに謝れよ!」


 だが周りにいたクラスメートたちがオレを言葉の暴力でフルボッコにしてくる。


 ――――は? それを言うなら石田が白川に謝れよ! 


 ――――佐々木を寝取って済みませんでしたってな。


 ――――それに佐伯の幼馴染を恋愛相談にかこつけてヤってしまうとか最低すぎんだろ!


 え? 机に落書きされたオレが悪者になんのかよ!!!


―――――――――あとがき――――――――――

大変長らくお待たせいたしました。明日よりいよいよ絵里花がとあるところから情報が漏れ、没落していきますwww

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