第25話 神デザイナーをキモオタ呼ばわりした幼馴染

「ククク……皆まで言うな、我ともなると理解しておる。さすが我が盟友……複数の女子おんなごと交わり子孫を残そうとは我も畏敬の念を覚えざるを得ん……」


 いつもの厨二セリフを吐く希美だったが、どこか声は震え、俺を見る目がいつも以上に蔑んだ感じに見えてしまう。


「いや希美……ちょっと引いてるよな?」

「そ、そのようなことはない!」


 高木さんや島谷さんの格好と図らずも石田さんを押し倒しておっぱいに顔をうずめていれば、中学生の希美にもえっちなことをしていたことぐらいバレてしまうだろうな……。


 明日から口を利いてくれないかもしれない。


 俺が希美から「お兄ちゃんの洗濯物といっしょに洗わないで!」される危機を迎えようとしたときだった。


「エカテリン、勘違いするんじゃねえぞ。これは儀式だ。ヴィンセントはエリカから数々の屈辱を受け、最早瀕死の状態なんだ」


 高木さんは仰々しく厨二セリフを吐くとすかさず島谷さんにアイコンタクトを送る。


「そうなの。いま聖女イシーダがヴィンセントに恩寵のミルクをお与えになるところなのです」


 だいぶ無理くね?


 いやいや俺の名誉を守るため、わざわざ希美のレベルに合わせてくれてることを感謝しなきゃ。


「くぅ……我としたことが……そうであったか! 我はどうやら拙速なる思慮をするところであった」


 希美は眼帯を押さえ、首を大げさに左右へ振っていた。


「邪魔したな。ヴィンセントよ、回復した暁には我とまた死闘を相見えようぞ! ククク、ではさらばだっ!」


 ふうっ……。


「しらっかわくん……」


 希美は高木さんたちのおかげで満足げにリビングをあとにしたが、俺はいまの状況をすっかり忘れており、覆い被さられていた石田さんは喘ぐような、苦しいような色っぽい声を上げていた。


「ごめん!」


 慌てて、俺は彼女の手を取り引き起こした。


「ううん、こっちこそありがとう。白川くんが助けてくれなかったら、頭を打って病院にいかなくちゃならなかったかも……」

「病院かぁ……石田さんみたいな天使さまが看護師だったら、わざと怪我して入院してしまうかも」


「えっ?」

「あ、いや独り言だから……あはは」

「なんか妬けてくるんすけど」

「ホントですね!」



――――俺の部屋。


 またうちの家族に見られたりしたら大変だ。


 あらぬ誤解を受けないように制服に着替えてもらい、俺の部屋へみんなを案内した。


 我ながら正直女の子を招くような部屋ではないことは絵里花から散々指摘されていたから、分かってはいたんだけど……。


「「「ええええーーーーーーーーーーーっ!!!」」」


 ああ、みんな絵里花みたいに俺をキモオタ認定するんだろう。でもいいんだ、俺の表面だけ知ってもらっても仕方ないと思ってたから。


「オタとかそんなレベルじゃねえよ、これ」

「3Dプリンターがあるなんて!」

「美術館みたい……」


 みんなの目がうっとりしてることに俺は驚いた。


「えっ!?」


 それほど数はないが作った市販のプラモやレジンキャストで作成したオリジナルのフィギュアをガラスケースに入れて、ライティングしていたからそんな印象を持たれたのかもしれない。


 イワイヤのゴッデスデバイスなどのメカ美少女だったからなのか、絵里花はキモがって部屋に入る度に俺の丹精込めて作ったフィギュアを無断で捨てようとしてくる酷い子だったのに……。


「これは芸術品だと思います!」

「生きてるみたい……」

「なんか今にも息を吹き返しそうだな」


 俺は工業デザインこそ、俺の父さんや人伝にだが

絵里花の会社の人たちに誉められたことはあっても、趣味を誉められたことがなかったのでテンパって意味不明なことを言ってしまう。


「俺の作ったプラモやフィギュアより……みんなの方がよっぽど綺麗だし、かわいいよ……」

「「「!?」」」


 三人にキザったらしいことを言うと恥ずかしくて、体温がインフルにかかったみたいに急激に上がったような気がした。


「そんなこと……二人っきりのときに言えよ……」

「白川くんは天然たらしですっ!」

「白川くんからそんな言葉をもらえたことがうれしい……」


 でもそれは俺だけじゃなくて……。


「いやこれ……絵里花はキモオタとかバカにしてたけど、芸術品の域だろ……」

「お金を出して買う価値があると思う……」

「そ、そうかな……そう言ってもらえるとうれしいよ」


 絵里花は無価値、無意味、無駄無駄無駄無駄無駄ーーーーーッ! って俺の趣味を全否定してたんだけど、子どもの頃、父さんの知り合いに見せたときに四分の一スケールのスタチューを百万で買うとか言われて以来、怖くなって黙ってたんだよな。


 恥ずかしさからか、視線を逸らした島谷さんがPCとセットで置かれたデスクを見て、食いついていた。


 あれ? そういやさっき、島谷さんのこと、まりんとか言ってなかったっけ?


 その隣にうまく出力できたフィギュアに島谷さんの注目がゆく。


「わあっ! うれしい……私のフィギュアも作ってくれていたんですね」

「あ、うん……やっぱりキラリは俺の推しだから……」


「私の?」

「もしかして、島谷さんは流星キラリの中の人なの?」


 俺と島谷さんはしまったと顔を見合わせ、口を押さえるももう後の祭り、高木さんと石田さんは……。


「すげーぜ! まりんがV Tuberのキラリに転生してたとかなぁ!」

「私は詳しくないけど、白川くんが勧めてくれてから、キラリだけは観てた。まさか島谷さんが中の人だったなんて……」


「島谷さん……これ、もしよかったらもらってくれる?」

「えっ!? いいの? こんな手の込んでるキラリを……メーカーのフィギュアのクオリティの比じゃないよ」


「ホントはさっき話したこともあって、売買はもちろんのこと譲ったりしてないんだけど、俺のせいで島谷さんが身バレしてしまったから」

「ありがとう……白川くんが作ってくれた私の分身とも言えるキラリだもん、ずっと大切にするね」


「V Tuber事務所を辞めることになったら、おっぱいモデラーの汐留しおどめうみちゃんみたいに私も配信したいんだけど、できるかなぁ?」

「や、辞めちゃうの?」


「だって……私好きな人がいるだもん。やっぱりファンを欺いてるみたいだから……」


 俺の手を握ろうとしてきた島谷さんに対して、高木さんはそうはさせまいと島谷さんの手を俺の代わりに握ってしまう。続けてスマホを見ながら、教えてくれた。


「なんかニュースでてるな。おお、バルキューバのトースターが今年のグッドデザイン賞の大賞を取ったらしい」


 えっ!? 俺がバイト感覚でちゃちゃっと描いたあれが受賞?


―――――――――あとがき――――――――――

明日はクズ男の停学が明け、登校してくるのですが……。優一の無自覚煽り&ざまぁが炸裂します。

受賞したということはパーリィ、パーリィと言えばお披露目ですねwww


優一の作ってたメカ美少女は高峰ナダレ先生や深井涼介先生のような感じを思い浮かべてもらえるといいかも。

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