第24話 けじめと三人の告白

「せ、狭いぃぃ……こんなに狭いなんて思っても見なかったよ」

「あふぅ……でもまだまだイけるだろ? もうちょっと……もう少し、ほんの少し……そ、そこ、奥いいっ! そ、そこおぉぉぉ!」


「うん、うーっ、うーっ、イケ! イケったら、届けっ! 届けったら!」

「奥に当たってるぅぅ!」

「クゥゥゥッ!!! ふう、やっと取れた」


 鳥谷さんが制服を脱いだとき、ポケットに入れていた鍵がソファーの下に入ってしまい、俺が表から手探りで探し、背もたれ側から高木さん見て俺に指示を出してくれていた。


「はい、島谷さん。次は落とさないようにね」

「ありがとうございます」


 正直絵里花と石田が俺に対して、これ見よがしに猿みたいな交尾を見せつけてきても正直笑うしかできなかったんだが、高木さんたちは俺のおかれた境遇をかわいそうだと思ってくれていたんだろう。


 ただ……彼女たちが深い仲にあるわけでもない俺に男子なら誰もが憧れる姿を晒した上に乙女の素肌に触れさせてくれるなんて思ってもみなかった。


 あのまま身を流れに任せていたら、俺はどうなっていたのか想像がつかない。



――――数分前のこと。


 惜しいことをしてしまったのではないかと思う一方、俺は石田みたいになりたくなかったので、彼女たちに俺と絵里花との関係を打ち明けている。


『俺を慰めてくれようとする気持ちは感謝しても感謝したりることはないよ。でもね、ちゃんとけじめをつけないといけないと思うんだ』

『けじめ?』


 俺の耳たぶを舐めていた高木さんの手……というか舌が止まり、聞き返してくる。


『うん。みんなは知らないと思うけど、俺と絵里花との関係は親同士が決めた婚約だったんだ。だから俺にとって絵里花は彼女……というより婚約者と言った方が正しい』


 裸エプロンで、乳首当てゲームをすれば敗北確定となった状態で俺の顔におっぱいを押し付けていた島谷さんが口をへの字にさせ、眉根を下げた困り顔であり得ないといった表情をする。


『そんな婚約者なんて恋愛小説でもないのに……』

『まったくだ。いつの時代なんだよ』


 島谷さんと高木さんが婚約という時代錯誤に呆れていたけど、石田さんは違った。


『私は、佐々木さんが白川くんの本当の彼女に見えたよ』


『まあ子どもの頃からの長い付き合いだし、絵里花の両親からも『うちの子を頼む』ってお願いされてたからね。絵里花は外面が良かったから表では世間体を気にして俺を彼氏扱いしてたけど、裏では召使い程度にしか思ってなかったんだろうな』


 俺が自嘲ぎみにみんなに内情を打ち明けると、


『い、石田さん!?』


 彼女は俺を強く抱きしめ離さない。


『おい、志穂どうしたってんだよ』

『私……白川くんに謝らないといけないことがあるの。白川くんに内緒で佐々木さんが浮気してるってメッセージを送ったのは私だから』

『石田さんがフェアリーってこと?』


 石田さんは無言でこくりと頷いた。彼女が頷いたあと、まぶたがキラリと光り、綺麗に澄んだ瞳から熱い滴が俺へこぼれ落ちていた。


 もしかしたら、彼女の中で俺と絵里花の関係を壊してしまったことを申し訳なく思っていたのかもしれない。


 俺からすれば、むしろ感謝しかないのに……。


『気にしないで。俺はフェアリーには感謝しかないよ。俺を絵里花から解放してくれた存在なんだから』

『うん……うん……ぐすっ、ぐすっ、ありがとう……白川くん……』


 自責の念を抱いた石田さんがかわいそうで、愛おしくて、高木さんたちがいるのにも拘らず、俺は石田さんを抱きしめ返す。


 俺も石田さんも根が真面目で苦労人っぽく、お互いの頑張りを称えあうようにしていると、急にまた石田さんの綺麗な瞳を見たくなってしまった。


 両肩を掴むと石田さんが華奢な身体で重荷を背負っていたんだと思うとますます気持ちが抑えられなくなり、じっと彼女の瞳を見つめていた。


『本当に綺麗だ。俺はずっと石田さんの瞳を見ていられそうな気がする』

『私は白川くんにずっと見つめられると恥ずかしい……』


 石田さんは右手を胸元に置くと恥ずかしそうに俺から視線を逸らすものの、気になってまた俺を見るということを繰り返す。だけどなにか意を決したのか目を閉じ、顔を俺へ向けて何も言わず黙っていた。


 これってもしかして、キス待ち!?


 ここでそんなことをしたら、俺は絵里花のことを言えなくなる。でも石田さんの気持ちを考えたら、俺から言いだすのは……。


『志穂~、そのデカパイで白川を誘惑すんのは反則だぞ』

『そうです! 私なんかノーブラで誘ってるのに白川くんは襲ってこないんですから!』


 島谷さんはぷんぷんと頬を膨らませて、俺が理性的に振る舞っていることに不満げだった。


 いや……たぶん、この仲の誰かと二人きりだったら、とっくに理性のたががぬるぬるに滑って外れてるよっ!



 二人がどたばたしていたせいで鍵がソファーの下に入ってしまったが、拾い終えたところでみんなはかしこまっていた。


「えっとさぁ……いくら白川が鈍感つっても、もう気づいてると思うんだけど、あたしは白川のことが……白川のことが……」


 口火を切った高木さんだったけど、緊張しているのか言葉に詰まってしまう。そこへ透かさず、島谷さんが主導権を奪っていた。


「黙ってるなら、私が先に言っちゃいますね。あとが支えてるんですから。私は白川くんのことずっと前から、むぎゅっ!」


 島谷さんに先を越された高木さんが島谷さんのおっぱいを鷲掴みにして、言い終わることを阻止してしまう。


「地味子に偽装してやがったくせに裸エプロンなんてエロい格好で白川を誘惑しやがって、あたしの目は誤魔化せねえって。萌がまりんだったなんて丸分かりだろ!」


 ん? まりんって、あのプラモアイドルの?


「ああっ! なんでバラしちゃうんですか! ずっと黙ってて、白川くんにだけ打ち明けようと思っていたのにぃ」

「いいだろ、どうせバレんだし」


 高木さんと島谷さんがどちらかと言うと不毛な言い争いをしていると、石田さんが俺の前に来ている。


「二人は忙しいみたいだから、改めて私から白川くんに伝えたいことがあるの……さっきはセフレなんて言ってしまったけど、白川くんさえ私を許してくれるなら、つきあっ……ひゃっ!?」


 どうやら俺に先に伝えたいことがあったらしいんだけど、高木さんが石田さんを止めるために後ろから強く肩口を掴んだら、ブラウスのボタンが弾け飛んだ。


 それと同時に俺の目の前で露わになるたわわに実ったおっぱいに思わず息を飲む。


「おい……ばるるんって弾けたぞ……」

「弾けましたね」

「うーっ! 二人とも許さないんだから」

「わーっ! 志穂が怒った!」

「だから高木さんはやりすぎなんですよ!」


 石田さんが片手で胸元を覆いながら、二人を追い回しながら、ぽかぽか叩いていると二人が俺の後ろに隠れてしまう。


 勢い余った石田さんは俺にぶつからないようにフローリングでブレーキをかけるように足を踏ん張った。


 だが!


 さっきのメレンゲの拭き取りが甘かったせいで後ろに踵が滑って、転びそうになっていた。俺は慌てて石田さんの後頭部に手を伸ばし、彼女を抱きかかえながら、フローリングへと着地する。


「ギシギシアンアンと……さっきからもしやアースドラゴンが暴れているのか……? 我が居城パレスまで鳴動してお……る……」


 突然リビングのドアが開き、俺が石田さんを守ったと安堵したそのとき、希美が入ってきて俺たちを見て固まっていた。


 俺の顔は石田さんのおっぱいに埋まっていたのだから。


「いまは目覚めのときではなかったようだ……引き上げるとしよう……」


 ギィィと音を立てて、リビングのドアは閉じた……。


―――――――――あとがき――――――――――

えちちしてるとこが妹バレしちゃったwww

いや誰ですか、仲間外れはいけない妹も混ぜてあげれば、なんて言ってる人は! 作者でした( ´艸`)

そろそろクズ男だけじゃなく、クズ女絵里花もざまぁしてくれ、という読者さまはフォロー、ご評価お願いいたします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る