第20話 厨二妹と美少女とパンケーキ

「わあ! お家大きい! なるほどまさに優良物件というわけですなぁ!」


 島谷さんが俺の家を見て、キラリ風の感想を述べると石田さんたちの目が獲物を狙う雌豹のように見えた。


「お家の大きさは関係ない。白川くん本人が私にとっての優良物件だから」

「ちょっ、志穂がそんなはっきり宣言しちまうとか、どうしたってんだ?」

「高木さんはどうなの?」


「あたしは手放した奴は本当にバカだなって、思うな、マジで」

「うんうん、私もそう思うよ!」


 三人は肩を組んでひそひそと合議を重ねていたが円陣が解けたところで、俺の家に入ってもらう前に伝えておかないといけない注意事項があった。


 それは俺の妹の存在。


「話しておきたいことがあるんだけど、残念ながら俺の妹は重症を患い、みんなに迷惑をかけてしまうかもしれない。それでもいいかな?」

「どこか身体の具合でも悪いの?」


「ううん。身体は平均より少し成長が遅いだけで、至って健康なんだけどね」

「じゃあ、いったい……」


 ガチャリ……。


 俺が開ける前にドアが開いて、小柄でゴスロリ衣装に眼帯、右腕と左足には包帯という重度の厨二病を患った女の子が出できた。


「ククク……今日はやけに邪王眼がうずくと思えば、やはり。前々々世よりの我が盟友ヴィンセントがエリカ・ササキ以外の眷属を連れてくるとは何万年以来だ? いや原初のことであるな!」


 逆だ、逆。俺が絵里花の眷属だったんだって。


「みんな、立ち話もなんだし、上がって上がって」


 軒先でいつまでも病人を世間の世知辛い風に当てておくのもどうかと思い、みんなを家の中へ招く。


「わあっ! 玄関がとっても広いです」

「うちなんかよりずっと大きいよ……玄関土間に二人いたら狭いくらいだから」

「うちは一人でも窮屈だからな」


 それでも絵里花の本邸に比べたら、オレの家なんてウサギ小屋だと思うんだけど……。それは口に出さない方がよさそうだな。


 とりあえずステージ4の厨二病が治るはずもないが、キミの名は……でもなく妹の名を呼んでみた。


希美のぞみ……みんな奇抜な姿に引いてるからとりあえず眼帯はぐらいは取ってあいさつしような」


 みんなは優しいのか、俺の言葉に首を横に振ってくれていたが、出落ち感のある妹の姿に驚かない方が不思議だ。


「これだから、盟友ヴィンセントの健忘にはほとほと手を焼く。我が真名は希美などという仮の世を忍ぶ名前ではない。エカテリン・テネブラエールである! 我が盟友は唯一理解してくれていると思ったのだが、実に慟哭どうこくものの悲しみが心をむしばむ」


「分かった分かった。あとでスフレパンケーキ作ってやるから、素に戻れって」

「うん! 希美はたくさんのお兄ちゃんの作るスフレパンケーキが食べたい!」


 凛々しく構えていた希美の頬が緩み、年相応の無邪気な笑顔に変わる。


 まあ兄ばかと言われてしまいそうだが、希美はかわいらしいことが救いと言えた。


「ククク、エカテリン! 引っかかったな。貴様が食べ物に弱いことはすでに判明しておる」

「なっ!? 謀ったな、ヴィンセント!」


「俺の策謀に引っかかったから、しばらくエカテリンは棘の城希美の部屋にて3ターン閉じ込められることになるな」

「なんと!? 仕方ない、ここは退いてやる。ではさらばだ、諸君!」


 あの茶番をやらないと希美の機嫌が悪いからな……ただみんなドン引きしてるはずだ。実際絵里花は希美のことを散々痛いと言っていて、かなり嫌ってたから。


 絵里花が来る機会が減って、希美はスゴく元気……というか厨二病の具合が進行したからなぁ。


 俺が体よく双翼の魔王のエカテリンを宥め、彼女がハウスしようとしたときだった。


「あたしは高木いばらっつうんだ。よろしくな。それにしてもなんだ、このクソかわいい生き物よぉ! はぁはぁ……。お姉ちゃんとコスプレして撮影会しようよ、ねえねえってばぁぁぁ」


 ドン引きされるどころか、高木さんの趣味にドストライクゥゥゥ!!!


「なぁぁぁっ!? だ、抱きつくではない! ええい離せぇぇ、我は盟友以外に抱きつかれるのはいやなのだぁぁ!!!」

「若い娘の抱き心地サイコー! やっぱJCは瑞々しいよなぁ!」


「ぬあぁぁ! き、キモい……助けてお兄ちゃぁぁぁ~ん……」

「「「高木さん……」」」


 みんな希美の厨二病にドン引きするどころか、エロ親父のように希美を撫で回す高木さんにドン引きしていた。どうやら高木さんはキス魔ならぬハグ魔の気があるらしい。



――――リビングダイニング


「おおっ! すげえ……バルキューバのトースターに電子レンジ、ポット、おまけにクッキングヒーターにホットプレートまでありやがる……しかもマイスター仕様じゃんかよ!」


 高木さんは俺がリビングに案内するとすぐさまダイニングの方を見て、切れ長の目を丸くしている。


「あははは……まあ、半分うちの製品みたいなものだから。あれだよ、いわゆるOEM他社ブランド製造って奴」

「よく分かんねえけど、すっげえ! なんか置いてあるだけでダイニングがおしゃれ感マシマシだろ」


「私もいいと思う。お店に置いてあったときより何倍も良く見えるね」

「あ~ん、使ってみたレビュー動画上げたくなります」

「じゃあ、さっそく使ってみようか!」


 みんなは手洗いを終え、制服の上着を脱ぐとエプロンをつけた。


「ど、どうかな……?」


 石田さんの制服エプロン姿を見た途端、感電したんじゃないかってくらい俺の身体の中に衝撃が突き抜けた。


 あり得ないことだけど、高校生同士で結婚したら石田さんが若妻として制服エプロンを毎日披露してくれるとか妄想したら、心停止しそうになる。


 気になったのか石田さんは背中を向けて俺に訊ねてきた。前の防御力は万全なのにスカートからすらりとした太股が伸び、ニーハイとの絶対領域たる素肌を俺にさらす……。


「変じゃない?」


 変です!


 俺が!


 石田さんのこれぞ学生妻といった姿に目を奪われていると、リビングのソファーの背もたれにはブラウスとスカートがかかっていた。


「エプロンといったら裸エプロンですよね~」


 俺が島谷さんの声で振り向くと、そこには……。


―――――――――あとがき――――――――――

厨二妹と言えば、作者は『はがない』の小鳩を思い出します。あんちゃんと人懐っこい感じがよかばいwww

萌はなにしてるんでしょうか?

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