第19話 幼馴染には価値が分からなかった

 サッカー台で袋詰めを終え、ビニール袋のすべてを持とうとすると高木さんがみんなに声をかけた。


「みんなで手分けして持とうぜ」

「いやこれくらい俺だけで持てるよ。それに女の子に荷物を持たせるとか悪いから……」

「あははは! 構わねえよ。みんなも持ちたいよな?」


「うん、そのつもりだった」

「はいはい! 私も持つよ」

「ってことだ。三対一で決定な」


 高木さんの声に石田さんも島谷さんも即座に同意し、俺の腕かかったビニール袋をすっと自分たちの腕に差し替えた。



 あ……ありのまま今起こったことを話すぜ!



 俺は荷物を持ったかと思ったら美少女たちが俺の荷物を持ってくれていた。しかもそれを率先してくれたのがギャルだったんだ。オタクに優しいギャルは存在してたんだよ!


 あまりの驚きに父さんの部屋で見た漫画に銀髪でハイトップフェードっていう髪型をしたキャラがしゃべっていたようなことを思ってしまう。


 なんだろう、この女子部員しかいない部活か生徒会に男一人だけ紛れ込んだようなハーレム感は!


「わぁっ!?」

「も、もう急に立ち止まんないでください」

「ああ、ごめんごめん」


 高木さんの背中に島谷さんが軽くだがぶつかってしまう。俺たちは高木さんを先頭にスーパー内を歩いていたが、彼女はテナントで入っていた家電量販店の店先で突然立ち止まったから。


「いったいどうしたって言うんですか?」

「ああ。あたしさ、このトースターが欲しいんだよ。だけどBBAが『いばらちゃん、欲しいものは自分の手で掴み取るものなのよ』とか抜かしやがって、家の奴を買い換えてくんねえんだ……」


「バルキューバ……すごくおしゃれ」

「おお! 志穂も分かってくれるのか!」

「うん、使い勝手は分からないけど、落ち着いた色とレトロな感じが良くて、私も欲しいかも」


「少し前に発売されたみたいですけど、スゴく人気があって人気のカラーはウルカリで転売されてるみたいですよ」

「あたしさ、こんなかっけー家電のデザインした奴の顔が拝んでみてえよ」


「うんうん」

「うん……」


 えっと、どうしよう……。


 ここにいるんだけど……。


 いっぱい誉められたあとだととても言い出しにくい。絵里花にも俺がバイトがてらスマホ以外のバルキューバ製品のほとんどのデザインを手がけたとか打ち明けてないんだから。


「ん、どうした白川? 風邪でも引いたか?」


 えっ!?


 高木さんは長い前髪をかき上げると俺のおでこに額を当てて、検温していた。彼女はあまりに仕草が自然で俺のパーソナルスペースに警戒感を抱かせずに入ってくる。


 これが男を落とすギャルのバグった距離感というものなのか!?


「ん~、大丈夫そうだな。良かったよ」


 いや大丈夫なんかじゃない。


 心臓がばくばく言って、爆発しそうなくらい鼓動が高鳴ってるって!


「あっ、ズルい! 私もいいですか?」

「わ、私も……お願いしたい」


 えっと、そういうものなの?


 みんななんて優しいんだ!


 石田さんだけじゃなく、みんな天使としかいいよがない。余りにもしあわせすぎて横たわっているパトラッシュがいないか、周囲を見渡したくらいだ。


 それに比べ絵里花と言えば、俺が熱があろうが極寒の中、コンビニへ行かせてクーバーイーツさせた上にしんどくて戻るのが遅かったことが不満だったのか、おでんが冷えてるって言って俺に投げつけてくる。


「くっ、くっ……なんでみんな俺にそんなに優しいんだよ……本当に現実なのか? 絵里花のどっきりとかじゃないよな? 信じていいんだよね?」

「白川くん、泣かないで。私はキミに助けられた。だからこれはほんの恩返し」


 いや泣いてはいない……んだけど俺の頭は石田さんの胸元に抱かれ、慰められていた。もしかして石田さんって着やせするタイプなんだろうか……。


 クールそうに見えて、いちばんいいお母さんになれそうな気がした。


「あの~、私たちのこと忘れてません?」

「二人っきりの世界に入っちまうのはなぁ」


 俺たちは島谷さんたちからジト目で見られており、慌てて離れた。でも石田さんはどこか名残惜しそうな表情をしている。


「それにしてもよぉ……3万は無理だぁぁぁ……」


 高木さんはトースターを欲しそうに眺めているが、値段を見てすぐに諦めたっぽい。


 と思っていたら、


「やっぱ18禁のエロゲ『JKギャルのぬるぬるローション相撲部』のコス決めて、同人誌を売るしかねえのか……」


 いやいや、そんなことしたら高木さんの将来がヤバいことになる!


 俺は慌てて、デザイナーが俺とバレないであろう範囲で提案させてもらった。


「高木さん、もし良かったらうちで買わない? 知り合いが安くで卸してくれるからさ」

「白川、マジかぁぁぁーーーーーーーーー!!!」


 むぎゅうううーーーー!!!


 黒髪に染めたとはいえ、襟は第三ボタンまで開いてふくよかなおっぱいの谷間が見えてしまっている高木さんに頭を抱きしめられた。


 だ、大丈夫だよな。


 絵里花を寝取られた俺を励ます会だよな……。


 あり得ないと思うが彼女たちと俺の煩悩領域展開にはならないか、ちょっと不安になってきた……。


―――――――――あとがき――――――――――

えっともしかしたら、明日の予定は自主規制が入ってしまうかもしれませんがお読みいただけるとありがたいですw

大人しい子でも横でセクシービデオが流れていたら、どうなるでしょう? おい、作者、焦らすんじゃねえよ! とお思いの読者さまはフォロー、ご評価お願いいたします。

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