第15話 間男の地獄とサレ男の天国
――――【渉目線】
はっはっはっ!
オレ、マジむかついてたから。
高校に入ってからというもの、オレは不幸続きだった……。
義妹になった志穂といちゃらぶとなり、休み時間や放課後にトイレや倉庫、校舎裏に隠れてエロいことをして、帰宅してもオレの虜になった志穂がオレを求めてくる……。
『お、お兄ちゃん……あそこが疼くの……』
『このドスケベ妹が! しゃーねえなぁ、じゃあヤるか!』
『うん♡』
そんな夢の生活を思い描いていたが、現実は志穂から股間にデスソースをぶちまけられ、オレの分からせ棒は腫れと痺れで3ヶ月もの間、使い物になんなかった。
入院中……、
『見た? 石田さんのアレ』
『見た見た! ヤバいよね』
『顔は良くてもアレはない』
『だよね、あははっ』
ぐぬぬぬぬ……。
外皮の火傷のような激痛に加え、尿道に管を通された痛み……オレの世話をした看護師たちからくすくすと漏れる嘲笑。
オレのプライドはズタズタだった。
誰なんだよ! 大人しい志穂があんな真似できるはずがねえ! 誰かが余計な入れ知恵をしやがったに違いないんだよ!
予定では志穂といちゃついていればコスプレギャルのいばらからは嫉妬され、モブ地味子の萌から遠くから羨望の眼差しで見られる夢のハーレム生活を送ろうと思っていたのに。
それもこれもすべて上手くいかないのは白川のせいだ!
教室でいちゃいちゃ見せつけやがって。
バカップルかよ。
だから白川みてえな冴えねえ男から絵里花を奪ってやったんだよ。しかもよ、絵里花の奴が処女だったことには吹き出しそうになったぜ。
放課後に呼んでもいねえのに陽キャのツレどもが集まってきた。まあこれがオレの人徳って奴なんだろう。
モテる男はやっぱつれぇわ。
「よお! みんな湿気た面しやがって。そんな変化のねえ生活を送ってるおまえらにオレからビッグニュースを届けてやるよ」
オレの周りにいるツレに絵里花を寝取ってやったことを自慢していた。絵里花のすっぴんは……だが化粧をすりゃ間違いなくいい女。
オレの連んでる陽キャたちも絵里花が憧れだとか、ヤリてえとか散々ほめちぎっていた。
「おまえらはオレの偉大さに驚くだろうな」
「もったいぶんなよ~」
「そうそう、早く早く」
「そう焦るなよ。オレは絵里花と寝たぜ。冴えねえ白川から寝取ってやったんだよ、はははは」
ツレたちが大爆笑の渦に巻き込まれるかと思っていたんだが、ツレたちの顔色はナスDかってくらい真っ青に変化してやがった。
「おい……渉。おまえ、やりすぎだって。あの二人を密かに応援してたんだから」
「おれもちょっと引くわ。あんなに仲睦まじい二人を引き裂くとか人間じゃねえよ」
「私、あの二人に憧れてたんだ。なのにぶち壊すとか石田くん……最低かも」
「だよね、なんうかあの二人ってクラスのマスコットみたいな感じだったじゃん」
「「「「確かに」」」」
「おいおいおい! なんだよ、それ! おまえらだってバカップルとか言ってたじゃねえか! あれは嘘だったのかよ!」
翌日。
絵里花の奴を迎えに行ったんだが、なんか髪のセットやらに時間がかかるらしく、先に行くことになっちまった……。
あいつから迎えに来いっつてたのに。
教室に入るといつもなら、ツレたちが自然と集まってきてうぜえくらいなんだが、オレが席に座って待てど暮らせど誰も来ねえ……。
これじゃ、オレが陰キャのぼっちみてえじゃねえかよ!!!
バンッ!!!
オレは強く机を叩くとクラスメートたちが一斉にオレを見た。
そのときツレたちと目が合うが奴らはスッとオレから視線を逸らしやがる。逆にオレからわざわざ出向いてやって問い詰めてやった。
「みんなどうしたってんだよ! なんでオレんところに集まらねえ? ああ、オレに文句があれば言ってみろよ」
オレがツレの胸ぐらを掴んで、吐かせようとするとまた目を逸らして、ボソボソと呟くような声をあげる。
「渉……もうおまえには付き合い切れねえよ。おれは白川の気持ちがよく分かる」
「もうクラス認定の夫婦だったのに寝取るとかあり得ねえって」
「白川がかわいそう……。いつもいっしょに居てたのに」
「あーマジ、ムカついてきたんだけど!」
「渉って顔はいいけど、それ以外はマジでダメ人間だから。人の彼女寝取るとか、人として終わってる」
オレがダチだと思ってた連中から百六十キロ超えの豪速球みたいな罵詈雑言が投げつけられている。
う……うわぁぁぁぁーーーーー!!!
オレはその後の授業に出れる気力を無くし、すべて授業をばっくれた。
なんだと!?
たまたま窓から外を覗くと校舎裏で白川とオレのお気に入りのオナホになるはずだった志穂がいっしょにいやがった!
――――【優一目線】(校舎裏)
「白川くん?」
俺が絵里花たちの汚いやり口に憤慨していると目の前には石田さんが目の前に立っていた。
「やっぱり白川くんってモテるんだ」
「俺がモテる? はは、石田さんまで俺を
すぐさま手紙を鞄にしまい込んだら、俺は石田さんに頭を下げた。
「ごめん……俺はそんなつもりじゃなかったんだ。もし石田さんが許してくれないって言うなら、俺は今ここで両目を潰すから!」
俺は指をピンと伸ばし、指先が眼球目掛けて一直線で突けるように構えた。
「罪深き俺はここで光を失おうとも石田さんの
でやぁぁぁぁーーーーーーっ!!!
父さんの部屋で見た古い漫画の蹴り技の達人が主人公を守るために採った方法しか、百万のフォロワーを抱える石田さんに謝罪できないと思ったんだ。
「ちょ、ちょ、ちょっ!!! 待って待って、白川くんっ!!! なんで目を潰そうなんてしてるのっ!? 意味分かんないよっ」
石田さんは俺の手を掴んだ必死に止めてくれていた。
「はあっ、はあっ……やっぱり白川くんは私のせいでおかしくなっちゃったんだ……」
彼女はようやく俺が諦めたのを見届けると、ポロポロと真珠のような涙を落とし、嗚咽混じりに心情を打ち明けてきているようだった。
だけど俺には彼女の言ってることが理解できない。
石田さんのせいで俺がおかしくなった?
「俺は至って普通なんだけど……」
「じゃあなんで目を?」
「うん。今朝しゃがんだときに俺の死んだ魚のような濁った瞳が石田さんの下着を捉えてしまったんだ。俺を呼び出したのも、謝罪を求めるためだったんじゃないかと」
「……ぷっ」
石田さんは沈黙を保ったかと思うと堪えられなくなったのか、息を吹いてしまった。
「そんなわけないよ。むしろ私は白川くんにいっぱい助けられてるから、お礼しなきゃいけない……」
いつもクールな石田さんの笑顔が見られて、俺は下着なんかよりよっぽど神々しく希少なものを見れたことに手を合わせようかと思ったときだった。
「ねえ……白川くん、もし良かったら、私と……セフレにならない?」
石田さんはスカートの裾を摘まむとゆっくりと持ち上げてきていた……。
―――――――――あとがき――――――――――
志穂たんの優一への想いは限界突破しちゃってました。運営さまにお手数をかけない程度に頑張りますが、フォロー、ご評価をたくさんいただくほど志穂たんが積極的に優一に迫るかもしれませんw
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