第14話 あそこがシビれる! はれあがるゥ!【ざまぁ】

――――【渉目線】


 高校に入るまで親父たちが留守をする機会に恵まれず、志穂以外の女どもを抱いて性欲を満たしていたが、心はまったく満足なんてものを得られるわけがなかった。


 やはり志穂を抱かねえ限り、オレのピュアでホットなバイブスは収まりなんてつかねえよ。


 だがついに計画を実行に移す絶好機を迎えた。


『志穂ちゃん、渉くん、行ってくるね』

『留守番を頼んだぞ』

『もうオレたちも高校生だ。いつまでもガキ扱いすんなって。それよりも予約してあるレストランに遅れてしまうぜ』


『まあっ!? たいへん』

『夏穂さん、急ごう』


 親父たちは一回目の結婚記念日を迎え、夫婦水入らずで高級レストランからのホテルってコースに出かけようとしていた。


『お、かあ……』


 志穂は玄関から出てゆく親父たちを呼び止めようとしていたが、二人のラブラブバカップルぶりを見て、すがろうとした手を力なく下げる。


 二人が玄関の鍵を外側からかけると志穂はオレから逃げるように自分の部屋へ入ってしまう。


 志穂がドアを閉めようとした瞬間にオレはドアと枠の隙間へと足を差し込み、志穂が籠もるのを阻止してやった。


『今日は二人きりなんだ。兄妹で仲良くやろうぜ』

『私は渉のこと、一度も兄だなんて思ったことない!』

『はっきり言ってくれるなぁ。だったら恋人同士ってことでいいよな?』


『頭がおかしいとしか言えないっ! 入ってこないで、この変態っ!!!』

『なんでオレを拒絶すんだ? オレとおまえなら美男美女のベストカップルになれんだろ』

『そんなのなりたくない!』


 志穂はオレにドアを開けられまいとドアノブを両手で掴んで必死に閉めようと抵抗するが所詮は女の力、オレが両手で掴んで引っ張ると志穂の身体ごとオレに寄ってくる。


 そのまま抱き寄せてやろうかと思ったが、志穂は咄嗟にドアノブを離しやがった。


 だがはまぐりのように固く閉じた扉は開いた。


『もう逃げらんねえぞ。オレがたっぷりかわいがってやるから覚悟しろ』


 今から志穂の蛤もオレがしっかり開けてやるんだからなぁ!!!


『い、いやぁぁ……近寄らないで!』


 志穂はオレに背を向けて、ベッドへと駆け上がり時計などの小物類を投げつけてくるが、オレの優れた反射神経はいとも簡単に飛んできた物をかわ……。


 ゴッ!!!


『いでぇぇぇぇ!!!』


 あろうことか、オレを見るだけで女どもは魅了され、犬のようにオレに背を向け腰を振る美顔に片手いっぱいに握り締めたビー玉が散弾のように当たっていた。


『本当に気持ち悪い! それ以上近づいたら、もっと投げつけるんだから!』


 くそっ! 想定外に志穂の抵抗が激しい!


 予定ではすぐにベッドに押し倒してやれば、黙ると思っていたのに……。



――――【志穂目線】


 私が渉に言い寄られたいたことを白川くんにバス停で相談しておいて本当に良かったと思う。


【本当は砂を顔に向かって投げるのがいいんだけど部屋の中じゃ、そうもいかないなぁ。だけど手ごろな大きさで石とかコインとか投げられる物は護身に役に立つからね】


 見ず知らずの私の話を真摯に聞いてくれた彼に惹かれていて、絶対にクズ男にヤられて堪るか、と思いを強くしていた。


 だけど集めたビー玉も限りがある。


『ははは、手を焼かせやがって。もう終わりだ。せっかくオレが優しく抱いてやろうと思ったのに、こりゃ志穂をたっぷり分からせてやんねえといけねえな』


 クズ男は蛇のようにチロチロと舌を出しては唇を舐めるという仕草を繰り返し、私は嫌悪感の余り全身に鳥肌が立った。


 私に抵抗する手立てが無くなったと見るや、クズ男はずかずかとパーソナルスペースであるベッドに上がり、私にいやらしいことをしてこようとする。


『ようやく大人しくなったか』


 吐き気がしそうだったけど彼の助言に従い、恐怖で震えて何もできないように振る舞った。もちろん演技ではなく、怖くて身体は震えていたけど、彼のことを思うと不思議と適切な行動が取れるような気がしていたから。


『おまえもオレの肉体美を見れば、オレの虜だ』


 クズ男はシャツを脱ぎ捨て、私に露わになった上半身を見せつけてくるが、勘違いもここまで行けば立派だと冷静に突っ込みながら、呆れていた。


 足を伸ばして座る私に、膝立ちになって迫るクズ男はカチャカチャと音を立ててベルトを外し、ズボンを脱ごうした。


 今だ!


 私はベッドボードに並べていたぬいぐるみの一つを掴んだ。


 私の手より少し大きい白クマのぬいぐるみを渉に向かって見せつけると渉はお腹を抱えて笑う。


『ははははっ! ぬいぐるみなんか出してきて、オレを和ませて、ヤらせないつもりか? おまえも意外と子どもっぽいんだなぁ!』


 クズ男は正面から溝のように澱んだ性欲を隠さず襲いかかってきた。このあと大変な目に遭うとも知らずに……。


 パカッと白クマの口が大きく開いて、クズ男に牙を剥く。



 バリバリバリバリバリバリッ!!!



『う、うぎゃあああぁぁぁぁぁーーーー!!!』


【バカな男はヤれると思った瞬間に隙ができるからそこを確実に狙えばいいからね。怖がって下手に抵抗すれば、叩かれたり酷いことをされるよ】


 まるでクズ男の行動を読んでいたかのような白川くんの助言で臆することなく、わざわざスタンガンの効果を高めたいかのように上半身の肌を晒したクズ男に電極を強く押し当てるとセクシーな女優さんが達したかのように反り返って気絶してしまった。


 まさか渉もぬいぐるみの中にスタンガンが仕込まれてるなんて思ってもみなかったんだろう。



 お、重い……。


 触りたくもなかったが、このまま私の部屋に居られても嫌だったので、気絶したクズ男を彼の部屋に運び終えた。


 なんとかクズ男を床に寝かすと二度とこんな馬鹿な真似を起こさないように教育する必要があったので私はマスクと保護メガネとゴム手袋を装着し、ポケットからある物を取り出す。


 小瓶の蓋を慎重に開けるとマスクをして十分に距離を取っているのに鼻や喉の粘膜をつーんと刺激してくる。


 私はこれまで受けた恨みとばかりにクズ男のおへその辺りに小瓶の内容物を流してゆくと、クズ男のお腹は真っ赤に染まり、マグマのような液体はクズ男の下着にまで染み込んでいった。


『ばいばい、渉』


 私は空になった小瓶をクズ男の部屋に投げ捨てる。


 小瓶には髑髏のマークが描かれ、デスソースと書かれてあった。


 その数時間後、隣の部屋から絶叫がしてクズ男はしばらく入院することになった。


―――――――――あとがき――――――――――

やっぱり教育って大事ですよねw

キャンタマは骨や筋肉、脂肪から守られていない剥き出しの内臓です。場合によっては重篤な事態になるので股間にデスソースをかけてはいけません。

優一の人生相談により志穂たんの乙女の貞操は守られました! 過去に志穂たんを守り、無自覚ざまぁをしていた優一がエラいと思った読者さまはフォロー、ご評価お願いいたします。

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