第4話 ネトラレうれしい!
ベッドの周りには乱雑に脱ぎ捨てられたシャツにズボン……チェックのスカートに紫のブラとお揃いの色のパンティ。
盛り乳用のシリコンパットが見当たらないところを見ると発覚を恐れて、外してきたか……。石田は絵里花の胸を揉んでいるとき、終始首を傾げていたのが傑作だった。
そりゃ絵里花は
パットに加え寄せてあげてるから、たわわに見えるが悲しいかな、絵里花のおっぱいは言うほど大きくはない。まあ手で触ったこともないから感触までは分からないが。
誰かに聞かれていたらどうすんだ? ってくらい絵里花は声をあげていたが、ことが済んだ途端激しく揺れていたベッドと時計やらスポドリなどの小物を乗せたミニテーブルは静かになった。
絵里花と一戦交え賢者と化した石田は深いため息をつくとテーブルのスポドリに手を伸ばす。一方の絵里花はぐたっとベッドに横たわっている。
しばらくすると絵里花はごろりとベッドの横に転がり、座っている石田の背中に肌をすりつけながら俺の前では絶対に出さないであろう猫撫で声で甘える。
『あ~、えっちで汗だくになっちゃった♡』
『じゃあ、シャワー浴びて来いよ』
『いいの?』
『両親はいねえし。いるのは志穂だけだからな』
おいおい……妹が家にいるのにクラスメートとヤるとか、マジすげえよ……。
動画に突っ込みを入れていると絵里花はお言葉に甘えて、といった感じで下着だけ身につけ、胴体に大きなバスタオルを巻きつけ、石田の部屋を出てゆく。
『っ!?』
それからしばらくして、シャワーを浴びて戻ってきた絵里香を見た渉の顔が引きつったように思えた。お化粧落とした絵里香は不細工の域ではないが歯に衣着せぬ言い方をすれば能面顔だ。
絵里花がゴージャスなお嬢さま顔に見えるのは俺が彼女のメイクをさせられていることもあると思う。
以前俺が絵里花の世話で忙しい合間を縫い、美プラのタンポ印刷なしのフェイスパーツの目を面相筆で描いていたときだった。
『キッモ! あんたさ、私と婚約してなきゃ、絶対彼女とか出来ずに一生童貞で終わってるって。そんなつまんないことしてる暇があったら、私のメイクしなさいよ!』
『……』
突然絵里花が俺の部屋にノックもなしに乱入し、
不幸中の幸いは自家発中ではなかったということか。絵里花にそんな場面を見られようものなら、動画を撮られ、奴隷以下のごみ扱いされていたことだろう。
結局俺が立場上逆らえないことをいいことに絵里花のメイクをさせられてしまった……。ただ驚くことに俺のメイクは周りから好評で絵里花はすごくかわいくなったともてはやされるようになってしまう。
使用済みのゴムが三回ほどゴミ箱に捨てられるのを見届けると石田と絵里花はピロートークを始めるのだが、そこでは絵里花の俺への俺への批判が繰り広げられていた。
『ほんと優一って、童貞くさくてデートするのも苦痛だったの』
『ははっ! マジそう見えるよな! あいつといっしょにいるだけで、オレは絵里花の価値が下がってしまうって思ってた』
『優一って私にもうベタ惚れって感じで片時も離れたくないオーラがむんむんしてて、ほんとウザかったんだよね~。もうこれで付きまとわれなくて、済むと思ったら清々する』
『絵里花も大変だったんだな。だけどこれからはオレとずっといっしょにいような』
『うん!』
俺が絵里花に惚れてた?
はははは!
勘違いもここまで行くと目を噛んで死ねそうだ。
寝転びながら両手を頭の後ろで組んだ石田の胸元に絵里花が顔を寄せ、ぴたりとくっつくと石田は絵里花の髪を撫でた。
うわははははははははははっ!!!
いいぞ、いいぞ、もっとやれ!
俺は悲しみなど
「やった! ついに絵里花と俺は別れられる!!! 家同士が決めた許婚なんて最初から馬鹿げたことだったんだよ! 絵里花、石田……本当に本当にありがとう! わざわざ絵里花の立場が危うくなるような寝取られビデオメールみたいなものまで送ってきてくれるなんて、俺にとって最高のプレゼントだ!」
さすが自己顕示欲の強い石田だけある。絵里花もそんな感じたから、ホントお似合いのカップルだよ。
「やったぁぁぁぁーーーーーーーーーーー!!!」
俺は歓喜に震え、諸手を上げ天井を仰ぎ見る。
そのままバタンとベッドへ倒れ込んだ。
ただ一つ疑問が残る。フェアリー=石田なのかは判然としない。まあ自己顕示欲の強い石田の奴なら十分ありえるが。
それにしてもご丁寧にも
どちらにせよ、俺はこれで絵里花と縁を切れると思うとなんの感傷に浸ることもなく、久々の安眠を迎えることができたのだ。
――――翌日。
「珍しいな、優一が一人で登校するなんて……今日は雪でも降るんじゃないか?」
教室に入ると、そのまま席に座り教科書やらノートを机の中に入れていると中学生のときもいっしょだった佐伯が不思議そうに話しかけてける。
「あははは、かもなぁ!」
「おいおい、どうしたってんだよ? なにかあったのか?」
俺は佐伯の冗談に笑って答えたが、ちょっと狂気じみていたのか、心配そうに訊ねてくる。
「優一っ!!!」
そこにようやく絵里花が現れた。
俺がモーニングコールをしなかったからか、息を切らして血相を変えている。
髪はなんとかセットしたようだが、ブローが甘かったのか頭のてっぺんの髪がひょこっと立って、アホ毛みたいになってるいるのが、滑稽でならない。
メイクも俺がやらされているときよりもアイラインの引き方が下手くそでなんとかパンダは回避したって感じ。
「あ、絵里花……いやただのビッチか」
もうなにも恐れることのなくなった俺は絵里花にいままで虐げられてきた恨みを込めて、言い放つ。」
すると絵里花は眉間にしわを寄せて、怒りの表情を露わにしていた。
「はぁ? あんた……誰に向かってそんな口聞いてんのよ! ふざけんのも大概にしなさいよ、私がパパとママに言いつけたら、どうなるか分かってふんでしょ?」
「言いつけられて困るのはどっちなんだろうな。ここじゃなんだ、場所を変えて話すか」
「なによ! 優一の癖に偉そうに!」
いつまでその威勢が保てるのか、楽しみでならないよ。
俺はポケットに入ったスマホを握り締める。この中に入った浮気の証拠とも言うべき動画を見たら、絵里花かどんな反応を示してくれるのか……。
―――――――――あとがき――――――――――
NTR物とは逆パターンでございます。
普通なら竿役にヒロインが、主人公とのいちゃつきを脅されてからNTR……それが定番なんですが、次回
期待しているという読者さまは、フォロー、ご評価お願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます