第6話

 ピーンポーン、ピーンポーン。

 私は今、彼の家の目の前にいる。とりあえず彼が言っていた通り手紙の欠片の残りを探しに来たけど、中からなかなか返事が返ってこない。

「すいません〜!」

 家に向かってそう言うとはいと言う静かな声が返ってきた。この声はと思いながら待っていると、玄関から出てきたのはやっぱり計留のお母さんだった。

「お久しぶりです」

「…………」

 声をかけても返事は返ってこない。多分彼女は失った自分の息子のことが忘れられないのだろう。悲しくて、悔しくてしょうがない。私だってそうだ。彼にもう一度会いたいと思ってる。もっとあの日、話していればと後悔もしている。

 私はあっといいことを思いついた。良くないことかもしれないと一瞬躊躇したが、自分の意志を貫こうと思い、彼女に話した。

「私は計留さんに言われてここに来ました」

 彼女の息子の名前を言うと「分かったわ。上がって」と言ってくれた。

 家へ上がらせてもらうと、リビングに案内される。彼女はちょっと待っててと言い、いなくなってしまった。その間、暇だったので家の中の見える範囲を見ていた。私の見る限り家の雰囲気は前来たときとそこまで変わっていなかった。

 そんなことをしているうちに彼女はお茶を淹れてきてくれていた。彼女は一口お茶を啜ると、さっきまで閉じていた口を開いた。

「時萌ちゃんは、けいちゃんになんて言われて来たの?」

 言葉で説明するのが面倒くさかった私は、今朝見つけた彼からの手紙を見せた。

「この手紙の欠片を全部探してほしいと頼まれたのです」

「なるほど。よかった……」

 え? よかったってどういうこと? 私はそう聞こうと思っていたのだが、彼女はごめんなさいと言い、部屋を出ていってしまった。

 そして、机の上には「けいちゃんの部屋は自由に出入りしていいよ」と書かれた紙が置いてあった。

 私は紙の端の方に「ありがとうございます」と書き、リビングを出た。

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