09 無才の冒険者 その9
初めてのお遣いならず、初めての常設依頼として選択したのはホーンラビット狩りだった。討伐部位の「角」と、回収袋一杯の「毛皮」と可食部位の「肉」を詰め込み、まさかの午前中で帰還したラハクに受付嬢のリリスは最初でこそ疲れて戻って来たと思ってたのだが……
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──え……と、マジ?──
「只今戻りました!」
午前中の掲示板前の混雑も収まってから1時間過ぎた頃、2時間程前にギルドを出て行ったラハクが戻って来た。
「あら、早いわね?……もう疲れちゃったのかな?」
とはいえ、担いでいる回収袋は膨らんでパンパンになっている。
「あー、リリスさん、もうこれに入り切らないので戻って来ました!」
……と、まだ血が滴っているホーンラビットが片手に握られている。
「あー……」
斃されてまだ時間が経ってないことがプラプラする足関節の柔らかさから伺い知れるが……
「その量だと
……と促すリリス。
「あ、はい、すいません!……では行ってきます!!」
と、元気良く返事をして裏庭へと回るラハク。それまでシーンとしていた受付前の、時間が停っていたかと思うくらい静かなそこに音が戻る……
「おいおいおい……誰だあいつ!?」
「昨日冒険者登録した新人だろ?」
「昨日の今日であんだけ狩れるかぁっ!?……あの回収袋ってアイテムボックス付与されてたよなっ!?」
「あぁ……見た目の2倍は入るってんで1度に1つしか貸してくれない奴だろぉ?」
……などなど。説明台詞お疲れさん的な感じで騒いでいるのだが……w
(まさか……あの量を午前中だけで?……どんだけ有望株なのかしら……)
リリスはニヤっと笑みを浮かべると、
(唾つけといた方がいいかなぁー?)
と思った瞬間、背筋にぞわっ!……と悪寒が走る!
(うわっ!?……何これ……これは危険な感じね……手を出したことがバレると命の危険?)
そして、アマリリスはキョロキョロと見回すがそんな危険なモノが居ないと確認するが……
(君子危うきに近寄らずってね……危険なら余り関わらないが吉ね……)
そんなことを思いつつ、リリスはラハクへの過度な接触は控えようと心に決めた。
その決意が後日、自分の命を落とさずに済むとわかり……本当にあの時そう決めて良かったと心からそう思うのであったが、それはまた別の話であるw
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生きるか死ぬか、その分岐路とはそんな些細な日常で決まることもよくあることだった……ホントカヨw
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