08 無才の冒険者 その8
お世話になったリーシャさん宅を後にし、まぁ……一宿二飯の恩義もあるし今度出会った時には美味しいご飯をご馳走しようかなと思う。
それまでには懸命に仕事して一杯稼がないとな、と思う……。さて、どんな仕事が待っているかな?
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──ランクF?……なんだ底辺かよ──
からんからん♪
軽やかなドア鈴を鳴らして、ギルドの中に入る。そして掲示板に近付こうとするんだけど……前には人が一杯居て近付けない……ので、受付カウンターに移動する。すると、暇そうにしてた受付嬢さんが手を振って来る。
「はい僕ちゃん?……ご用件は何かな?」
うーん……どーも一般人の子供相手の話し方だ。昨日、冒険者になったばかりだからしょうがないか……
「ええと……昨日冒険者になったラハクです!……が、ちょっと掲示板に近付けなくて……」
「あー……依頼は毎朝争奪戦で大変だからねぇー」
と、掲示板の方を見てそう答える受付嬢さん。
「毎朝なんですか……」
ちょっと驚いて返すと、
「まぁ……飯の種だから、どうしても儲けがいい依頼の争奪戦になっちゃう訳!」
「成程……」
「まぁー成りたてだとあの辺の依頼は請けられないから」
と、何枚か依頼票の写し?を渡してくれる。
「最初だから特別だよ?……常設依頼の写しね。あの人だかりで見えないけど端っこに同じのが貼られてる訳!……あの混雑とゆーか乱闘騒ぎで何日かに1回は貼り直しになるんだよねぇー……全く困った連中だよ!」
つまり剥がしちゃいけない常設依頼の依頼票まで剥がしちゃうことが多々あると……それは困るよね。だが、
「ありがt……有難い。これは貰ってもいいんだな?」
「あー……嘗められないようにするのはあいつらだけでいいよ?……私は特に気にしてないし」
「……わかりました、有難う御座います」
「いえいえ……ちなみに私はアマリリスね。リリスでもいいよ?」
「ご丁寧にどうも……僕はラハクです」
「ラハクくんね?……じゃあその中から何を請けるか決めて行ってらっしゃい!……常設依頼だから特に此処で受理とかしなくてもいいから!」
「わかりました」
という訳で、混雑している冒険者ギルドを出る。ちらっと振り返るとリリスさんが軽く手を振ってたので、ペコリと頭を下げてから外に出たのだった。
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「さて……どれをやろうかな?」
受け取った常設依頼票は次の5つだ。
◎側溝のドブ攫い……町の側溝を見て回り、ドブ攫いをした方がいいと判断した場所を決めたら一度ギルドに戻り、スコップを借りてドブ攫いの場所を報せてから作業を行う。作業終了時に側溝の傍の住人や店舗などの主人に確認して貰い、終了印を貰うこと(ギルドに依頼がある場合もある)
◎町の中のゴミ拾い……町を見てまわり、ポイ捨てされているゴミを回収する。この作業を行う場合は事前に回収袋を借りてから町に出て欲しい。仮に回収袋に入りきれない場合は面倒でも戻って交換して欲しい。回収袋は1度に1つしか貸与しない。※過去に持ち逃げした者が居た為の処置(ギルドに依頼がある場合もある)
◎地下水路の汚濁の清掃作業……スライムを使って清浄化はしているが一定期間に多量の汚濁が発生するとスライムだけでは浄化しきれない為。ゴミ回収袋に掃除道具を用いて削ぎ落として回収するも善し。神聖魔法を使えるなら浄化魔法を用いても善し。報酬は作業後にギルド職員の確認の後に支払うこととなる(公共事業の1つの為の措置となる)
◎グラスランドの町の外のホーンラビットの討伐と肉の回収……畑に害成すホーンラビットの間引きと肉の回収。数に制限は無いが回収袋一杯に回収すれば問題は無い(持ち切れる範囲にしないと持ち帰る時に困ることになる)討伐部位の角も忘れないこと(ランク実績に加算される)
※解体しないで持ち帰ると解体費用が発生する(2頭で銅貨1枚)
◎上記と同様だが対象はグラスウルフとなる……討伐がメインとなるが、持ち帰るのに毛皮もあれば増額となる。それ以外は地面を掘って埋めるか焼くかして欲しい。稀に魔石持ちもいるので注意されたし。
※魔石持ちは強いし体が大きいのすぐわかる
※解体しないで持ち帰ると解体費用が発生する(1体で銅貨1枚)
前半3つは「お掃除」系。まぁよくある奴だし簡単なのなら地元の村でも偶に依頼があった。後半2つは「討伐&採取」系。ホーンラビットくらいなら問題無いしグラスウルフだって魔石持ち以外は同様。
「……薬草採取系は無いけど栽培してる畑でもあるのかな?」
それとも、ポーションの供給元のお店なんかで育ててるのかもね? うちの村は薬師の婆さんが裏庭で育ててたくらいだからな……。取り敢えず回収袋が必要そうなんで、ギルドに戻って受付に向かう。
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「えっと……リリスさん」
「はい、オカエリー……何か忘れ物?……って嘘嘘。回収袋が入用かな?」
「何でわかったんですかっ!?」
「だってぇー……ウフフ……顔に書いてるしぃ?」
と、悪戯好きそうにいわれて「顔っ!?」……って顔を
「あははw……冗談だって!……回収袋だよね。何袋要る?」
って返される。うう……何かさっきから弄られまくってんだけど……
「一応、2つで」
そこで、ピタっと動きが止まる。
「えー……っとぉ、1袋でいいよね?」
「あ、さっきのは冗談ですか。そーいや規則でしたね……では1袋でお願いします」
と伝え、ギルドカードを貸してといわれたので首からチェーンを外して渡す。
「これで善し……と、じゃ、はいこれ」
「有難う御座います」
「さっきのは冗談でいっただけだから。冗談でもああいう返しは厳禁ね?」
「は……はい、以後、気を付けます」
とまぁ……ちょっとしたトラブルはあったけど……回収袋を借りて外へ出た。
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(これ、何か魔力が込められてる気がするんだけど……)
外壁を出て、草原が広がる道まで来てからまじまじと回収袋を見詰める。
「……この辺まで来ると、余り人は居ないみたいだな……」
僕には人に隠したことが幾つかある。それは両親にも弟妹にも、親しい村の人たちにもいってない……。それはスキル授与の儀でノースキルといわれ、見下された人たちにもだ。だって……、僕は……、スキル授与の儀ではなく、5歳になった時……、寝てる間に与えられてたんだ。その時に頭の中に染み込んだ、僕のスキルは他人に話すと不幸になるから……。だから、不幸になりたくないなら誰にも話してはならないと……そんな警告が付いてた。
まぁ……あの時は「なんじゃそら?」って思ったけどさ……。今となっては守って来て良かったと思う。きっと、僕をよく知る人たちだって……欲に目が眩んで、僕を利用すると思うだろうしね……
「オールマイティー・スキル」
それが僕のスキルの名前。欲しいと思ったスキルを体得させ、熟練度マックスで使いこなせるスキル。例え金を産む錬金術スキルですらあっさりと使えるようになって信じられない程の富を産み出せ、剛力や無限の魔力を体得して誰よりも強くなれる。そんなスキル……
でも、僕は必要最低限の力があればいいと考える。だから……水を生み出し、火を付けられる「生活魔法」(他にも色々できるけど)と……、いざ!って時に身を護れる「身体強化魔法」しか覚えてない。
※両方「スキル」ではなく「魔法」となっているが、そーゆー「魔法スキル」……という
昨日の試験では身体強化で合格したんだけど……流石に三徹で
(合格して良かったよ……本当)
「さて……まずはホーンラビットか」
身体強化で聴覚を研ぎ澄ませる……
ささささっ さささっ
聞こえる聞こえる……ウサ公たちの動く音が……
「じゃ、早速いっちょ狩りますかっ!」
僕は足に強化を掛けて駆け出す……それは子供らしかぬ速度だったという……
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後に「兎狩りのラハク」と噂されることに……ラハク「されてないよ!?」
ちなみにサブタイはラハクが入って来た時に(首から下げている)彼のギルドカードを見た先輩冒険者たちの心の声でしたw
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