07 無才の冒険者 その7
試験とはいえ、戦った相手の自宅に招待される。しかも年上の異性の家だ……これで心がときめかないなんて嘘だろう。
まぁ……残念な点が無いとはいえないが……乱暴な言葉、態度、そしてわざと作ったような嫌そうな顔。
でも……それは、まぁ……人は真実に近付かせたくなくて
だから、僕はそれを受け入れ、これ以上は近付かないように丁寧語で壁を作る……といっても、丁寧語は元々の言葉使いなんで余り意味はあるような無いような……
━━━━━━━━━━━━━━━
──……起きろ。早く起きないと……
「ぶひゃひゃひゃっ!? ちょおっ!」
いきなりの
……数分後、息も絶え絶えの僕と、リーシャさんが荒い息で覆いかぶさってて……
「ゲホゲホゲホ……ちょ、リー……シャ……さん、どっ、
擽り疲れたのか、ちょっと
すーっ
……っと、意図せず匂いを
がばちょっ!
と起き上がったリーシャさんが
「ちょっ!……お前……匂い嗅いだだろっ!?」
と真っ赤な顔+耳で……あっという間に後退って壁に激突……
ごいんっ……
「いってぇーっ!?」
後頭部激突して頭を押さえてしゃがみ込む……。いや、なんていうか……見てて飽きないお姉さんですわ(苦笑)
(そーいや昨日は色々あって気付かなかったけど、耳、ちょっと尖ってるんだねぇー……亜人の血が少し入ってるのかな?)
尖り耳といえば有名なのはエルフだけどそれは見たことないし……話しだけは聞いたって感じだ。他にも色々居るらしいけど、普通の人間よりちょこっと尖ってるだけだから地方特有の特徴かも知れないし、気にしてるかも知れないから突っ込まないけど……
「う゛ー……ったく朝っぱらから……朝飯の支度終えてるからよ……食うならさっさとこっちに来いや……」
と頭を擦りながら復活するリーシャさん。僕はそう促されて寝ていたリビングのソファから体を起こす。1人で住んでいる家だし客人を迎えることも無い……という訳で、ベッドは自身が寝る物以外は処分した……と昨日聞いており、寝るならリビングのソファで寝ろといわれたのでいう通りにした訳だ。一応、毛布は借りられたので十分過ぎる待遇だと思う。……何しろ、ソファはフカフカで実家のベッドと比べると雲泥の差だ。一生このソファで寝起きしてもいいなって思う程……いや、それはダメだろ。折角冒険者として身を立てて行こうと決めて来た訳だしね!
「おい!……さっさと来ねーと片付けるぞ!?」
「あああ!今行きます!!」
……という訳で、ちょっと気が短い家主の元へ……用意してくれた朝食を摂りに行ってきます!
・
・
「ごちそうさまでした!」
「はい、お粗末さん」
食器を片付けるのを手伝う。まぁ、木製で割れないので落として割る……なんてヘマはしないので助かる。リーシャさんも昔は陶器製の皿とか使ってたらしいんだけど急いでいると滑って落として割って後片付けも面倒だし……という訳で全部木製の食器で揃えたらしい。スプーンやフォークなんかは元々金属製で割ることはなかったけど錆びないようにメンテするのも面倒なのでこちらも木製にしたとか。まぁ、木製の食器もちゃんと綺麗にしてないとカビたり腐ったりするんだけどね……
「……で、これからどーするよ?」
「え?……そりゃ依頼をこなして報酬を貰って宿に泊まって……って生活しますが?」
「あー……まぁ、そうだよな……」
質問してこれからの予定を返事したら黙り込むリーシャさん。……うん、何を訊きたかったんだろ?
「それより、昨夜はお世話になりました。それで宿泊費とか食費なんですが……」
「ん?……あぁいいって……ありゃあたしが無理をさせちまったってのもあるしな」
手をぷらぷらさせて支払いを拒絶する
「まぁ……今夜からはちゃんと宿に泊まれるよーに、きちんと仕事して頑張るんだぞ?」
そういいながら、身内の……弟を見るような優しい
「あ、え、はい……本当に……色々有難う御座いました!」
「あぁ……気を付けてな……」
僕は、不意に優しい雰囲気になったリーシャさんに恥ずかしさを誤魔化すように、
ばばっ!
……と頭を下げて、玄関へと歩く。そして、ちらりと後ろを振り返ると……恐らくは出掛ける為に準備をしてるんだろう……もう姿が見えなかった。僕は……玄関のドアを開け、外へ出た。
「さて、冒険者として初めての仕事だ……」
頑張るぞ!……と手を挙げ、冒険者ギルドへ向かって歩くのだった……
━━━━━━━━━━━━━━━
まぁ……冒険者に登録したばかりだと、ロクな仕事無い訳ですがw
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます