06 無才の冒険者 その6

 昼前に行った冒険者登録。そして行われた冒険者登録に伴う試験。試験は対人戦闘試験だった……相対するは女冒険者だったが、見る者が見れば強者つわものとわかった。そして……

 日が暮れ、夜のとばりが降りた頃合いになって目覚めるラハク。勝ったのは自分だとわかったが気絶したのは計算外だった……三徹の強行軍で思った以上に消耗していたということだ。

 そして起きてすぐにギルマスに帰れ!って……いや帰る家が無いんすけど……と思ってたら隣で看病?してくれてた対戦相手のお姉さんが自宅へのご招待をするっていう……

 えーっ!?……年上の異性宅へご招待って一体っ!?(見目みめが怖く、言葉使いも荒いお姉さんだけどもっ!)

━━━━━━━━━━━━━━━


──いいか?……そーゆーんじゃないからなっ!……よ……夜這よばいなんてするんじゃねーぞっ!!──


「いえ、そんな恩知らずなことしませんて」


 めっちゃ狼狽ろうばいしながらいわれたので、スン……と真顔で返す。何処どこの世界にそんなことする人が……と思うラハクは無菌室育ちの箱入り息子みたいなものだろう。大抵の冒険者は自宅へ招き入れたということは……据え膳喰わぬは漢の恥と思ってるようなやからばかりだからだ。また、招き入れたリーシャこそ見た目はアレだが箱入り娘みたいな無菌室育ちのように見える。招き入れられた玄関に入った所で何処となくそっぽを向きつつ頬を(リーシャは耳まで)赤く染めているが……いつまでもそーしてる訳にはいかない。


きゅうう、ぎゅるるるる……


 そしてラハクの腹からは先程から音が聞こえている……彼が空腹だと気付いたリーシャは、


「そーいえば腹は減ってないか?」


 と訊く。


「あー、そーいえば試験って昼前にやりましたね……」


 ラハクは忘れてた……と、背中からズタ袋の口を手繰たぐり寄せて中を探る。


「あ?……何してんだ?」


「え?……あぁ、携行保存食がまだあった筈なので……」


 リーシャが問うと、ラハクはそう答えた。


「はぁ……折角家に招待したってのに携帯食だぁ?……お前本っ、マイペースだよな」


 食事くらい用意してやっから黙って座ってろ!……といいながら指し示す先は……


「あ、はい……有難う御座います」


 と返し、玄関口のマットで靴の汚れを落としてから座れと示されたリビングのソファに座る。


 普通は靴の汚れを落とすマットは外にあるのだが外に放置すると盗まれる為に玄関からすぐの所に据え置かれていた。その代わり、汚れが部屋内に入り込まないように段差があった。


 ラハクは割と多く付いた汚れを落としにマットを外に持ち出し……パンパンと払い落とす。


(なんか……いいなぁ、これ)


 勿論マットの汚れを払い落す行為がではなく、知らない女の人の家に招待されたことだが……ラハクの人生15年で、初めての経験であった!


━━━━━━━━━━━━━━━

 何か間違いが起こることは無いと知りつつも非リア充たちからは嫉妬の的なのには変わらないのだった!w


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る