第24話 変化③
まさか、今日あって話すなんて思ってもみなかったから、なんて話をするのかも忘れてしまった。もし、今度会った時は何を話すか色々と考えていた。このことを話そう、あれも話したい……向かっている時に必死に思い出す。でもなんか、話したかったなんて思われたら、恥ずかしいな。よし、ここは普通に行こう。はやる気持ちを抑えて、なんて声をかけようか考えた。前にカフェで話をしたときは、味噌汁だった。たしか、俺が初めて作ったところを動画で話したんだっけ。少し、思い出して笑ってしまった。その前の、沢村の表情も気になった。テラス席の男女を見て、寒くても話がしたいって良いよねって言ったのだ。
今まで女の子と付き合う時は楽しいか、別れるかのパターンしかなかった。こんなに会うことや連絡をとることで迷ったりはしなかった。まるで、学生の頃の恋愛のようだ。でも、彼女にそんな感情はない。ただ、周りに話が分かる人がいなくて、それを聴いて欲しくて会うのだ。そうだ、何を盛り上がっているのだろう。でも、話を聞くために会ってくれるのは嬉しかった。
「ごめん、遅くなって。今日、会うなんて思ってなかったから」
カフェの中で、携帯を見ながら待っていた。振り返った沢村は驚いていた。
「ああっ、ビックリした。急に連絡来たから、最初分かんなかった」
「あれ? 先に何か飲み物、飲んでても良かったのに」
テーブルには、閉じられたメニューとお冷だけだった。
「ううん、来てから頼もうと思ってたから」
「そんな、気にしなくていいのに。寒かったろ、温かいもので飲んでいても」
「一緒に頼みたかったから、はいメニュー表」
「ありがとう」
座って、切らした息を整える。走ったわけじゃないけど、急ぎ足で来ても息が乱れてしまう。コートを脱いで、ネクタイを
「俺は、カフェオレだな寒いから。お腹空いてる? 何か食べる」
「うん、ミックスサンドとアイスコーヒー」
「なんで?」
「何が?」
メニュー表を見ないで、当たり前のように言ってきた。こいつ、一緒に頼みたいって言って、もう決めていたのか。いやそれよりも聞き間違いか、アイスって言った?
「アイス?」
「うん」
ニッコリと
「冷えるぞ」
「猫舌だから」
「ああ、そういうこと」
「えっと、ミルクと砂糖は一つずつ?」
「ううん、ブラック」
「あっ、ブラック」
「うん、何か?」
「いや」
ブラックで飲むんだ。俺、カフェオレだけど。まぁ、好みだからいいのか。俺は、パスタでも食べようかな。急いできたから、お腹空いてきちゃった。店員さんを呼んで、注文した。沢村は、余程お腹空いていたのか、ジッと待っていた。
「そんなに、お腹空いてたの?」
「え? なんで」
「だって、他のところ見てたから」
あんなに目をキラキラさせて、他のテーブルの料理をチラッと見て、でも自分で決めたものは、これだと大きく
「美味しいものを食べることが好きで、嬉しいの」
「へぇ~、あっ、だから前に飯こだわってたんだ。裏道入ってさ、ここだって」
「あれは正解だよ。親子丼、美味しかったでしょ。最高でしょ、あれから二回行ってるから」
「そうなの!?」
「うん、味噌汁も美味しかったよ。豚汁と迷って、あとから味噌汁も飲んだの」
「美味しかった?」
「美味しかったね。汁ものが美味しい定食屋さんって、いいでしょ」
行ったんだ、俺はそのときお店を周りたかったけど、その後は行ってないな。結構、好きなものに対して、すごいんだな。
何を話そうか、考える必要はなかったようだ。一緒に買いに行ってから日は経っていたけど、その後沢村は行ってて。その時のことを嬉しそうに話をした。
「美味しいご飯屋さんを見つけて、嬉しかったなぁ。すぐマイリストに追加した」
「マイリストなんて、あるのか。行きつけのお店?」
「お気に入りのお店。唯一の楽しみ。美味しいものを食べると幸せになるの。ほっぺたが落ちるという意味が分かるようになった。大人になって、自分で入って好きなもの食べれるようになって、うん」
その時の親子丼を食べた時を再現して、落ちるほっぺたを両手で支えていた。
「あっ、食べ物の話になると止まらなくて。ごめん、面白くないよね」
「ううん、なんで? いいじゃん、俺も美味しかったし。買い物も出来たし」
「たくさん買ってたよね。あの買ったものとか着てるの?」
「うん、ネイビーのダウンだろ。暖かいよ、着てる着てる」
最初は何を話そうか、緊張したけど自分たちの好きなものの話をするのは楽しい。ひたすら、お互いの話で盛り上がった。
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