第23話 変化②
連絡してみよう。もし忘れられていたら、それはそれでいいか。さ、沢村……名前を確認してメッセージを送ってみよう。なんて、送ろうかな。
「久しぶり、元気?」
軽っ、なんか……誰? ってなるか。う~ん、これはどうだ?
「こんにちは、前に計量スプーン一緒に買いに行ってありがとう。良い感じです」
遅いよなぁ、今さらお礼かよってなるか。何が、良い感じだよ。思いつく内容にツッコんでしまう。送るのも
「美味しいものを食べたくて、料理続いてます。都合が合えば、また話しませんか」
いっか、これで。もし返事来なかったら、それまでの縁だったってことで。うん、別に忘れられているかもしれないし……えいっと送ってみた。うん、しばらく待ってみよう。
仕事をしながら、携帯が気になって仕方ない。5分ごとに画面を見てしまう。いや、気にしすぎだろ。見れてないかもしれない。忙しいしな……でも待てよ。やっぱり、変だったかな。何度も送った内容を確認する。
気になるけど我慢して、数時間経って携帯を持って休憩に出た。
「やっぱり、見てないよなぁ。返信も来てないもんな」
いや見たけど、会うのが怖いって感じかな。ああ、やっぱり買い物に振り回したからか……でも、付いて行くって言ってたもんな。現地解散でも、良かったんだけど。前に一緒に買いに行ったことを思い出す。ご飯を食べた後、気になった店があって入ったんだ。それで、嫌になったか。じゃあ、いいや。しょうがない……何も変わらない画面の理由を、自分に言い聞かせて納得させる。相手にも都合や断る理由もある、仕事に集中しよう。飲みかけていたコーヒーを一気に飲んだ。
「いいや、仕事に集中しよう」
あれから、仕事終わりまで携帯を見ないで過ごした。どうせ、来ないに決まっていると思い込ませながら。でも、確認するのも怖かった。もし来なかったら、これで終わるんだろうな。そしたら、また前の自分に戻るのだろうか。俺には、それが合っているのだろうか。慣れないことはするもんじゃないな……ネガティブな思いが、ただ返信が来ないだけなのに、次々と出てくる。
「仕事終わった。疲れた」
終わりのチャイムが鳴り、大きく伸びをして帰る準備をした。あ、明日、休みじゃん。それに気づくと嬉しかった。前に観たかった映画でも、観に行こうかな。パソコンの電源を落として、荷物を持って帰りの挨拶をして出口に向かう。
「お疲れ様です。お先に失礼します」
橋本がササッと小走りで寄って、肩を組んで小声で話してきた。
「おい、月本。お前、
「うん、そうだよ」
「何か予定とかないの?」
「う~ん、特にないかな」
「ふ~ん、このままデートとか……」
「ないって、じゃあな。このまま帰るから」
橋本の腕を外した。
「ふ~ん、なんか寂しいな。これから女の子と飲みに行くけど、お前も行く?」
「いいって、そういうのは。ありがとう、楽しんでな。じゃあ」
笑顔で、橋本と別れた。そういうのはなんか……もういいや。時間を見ようと携帯を出した。メッセージが一件入っていた。
「あっ」
周りを見渡して、急いで外に出た。会社を出て、少し離れたところまで急ぎ足になる。どうしよう、開くのも怖くなってきた。とりあえず、開いてみた。
「久しぶりです。ご飯作ってるんだ、すごいね。いいですよ、前のカフェで話します?」
えっ、いつ来てた? 気づかなかった、うわっ、二時間くらい経ってる。どうしよう、これはこの後のこと? マズい、なんて返そう。もう時間ないし、一気に焦りが出て来た。
「返信遅くなって、すみません。今、仕事終わって、会社出ました。大丈夫ですか」
よし、仕事のせいにしよう。これは、今日のこと? まぁ、話したかったし。うん嘘じゃない、だって本当に仕事に集中してたから。あっ、怒っちゃうかな。自分の中で色んな理由で気持ちを落ち着かせたところ、五分後くらいに返信が来た。
「大丈夫だよ、少し遅れても。適当に時間、過ごして待ってるから。あっ、今日で良かったのかな。別の日でも大丈夫だよ」
なんだ優しいな。こんな奴だったっけ。急いで、返信する。あ~でもなんか、今日だと、いかにも待ってましたみたいに思われるかな。いいや、今日で。
「今日でお願いします。向かいますので、すみません待ってて下さい」
「了解」
慌てて、カフェに向かった。どこかで、心を躍らせながら。
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