第21話 違い

 お昼休みは、休憩室でご飯を食べた。丸いにぎめしと、おかずは、ほうれん草のおひたしとり卵とウィンナーを焼いたものだ。

「うん、質より量、見た目より量、愛情より量……違う違う、自分に対する愛情」

 うふふっ、楽しくて一人で笑ってしまう。いつもは、どこで買おうか何食べようか迷っていたけど、すぐにご飯が食べられるのも嬉しい。

「あれ、月本? 久しぶりだな、調子はどう」

「ああ、橋本。うん、いい感じだよ」

 食べようとしたら、橋本が来て同じテーブルの椅子に座った。すると、ギョッと驚いた顔をした。

「おい、お前。彼女でも出来たのかよ」

「なんで?」

 ちょうど、ウィンナーを食べようとしたところだった。

「だってお前、弁当作ってくれる彼女でもいるのか」

「あっ、これ? 自分で作ったんだよ」

「なんで?」

「なんでって、作ったからだよ」

「作ったって、何かあったのかよ。よく見てみれば……まぁ、お前が作ったもんか」

 何だよ、失礼だな。少しムッとする。

「自分で作ったものだと、美味しいよ。理由は何もないけど」

「いやいや、何があったよ。数ヶ月前のお前は、女に振られてショックのあまり、飲み会も断っていた可愛い迷える子羊こひつじだったろ」

「そうだっけ」

「やめろよ、手作り弁当を作ってくるなんて。前のお前は次の恋愛って、飲みに行ってただろ」

「ああ、あったね。年なのかな?」

「やめてやめて、お前らしくない。てか、同期。はぁ、マジか……」

 橋本は大きくなげいて、頭を抱えた。

「何だよ、いいだろ別に。そんなに変わってないって。ところで、お前……」

「何?」

「時計、変えた? 見たことない」

「ああ、これ」

 

 橋本が、袖先そでさきをめくった。文字盤もじばんがキラッと光った。

「買ったの、ボーナスで」

「すごいな、いくらした」

「そんなにしないよ、分割だけどな。いいだろ、頑張ったご褒美ほうび

 マジマジと、腕時計を近くで見せた。うわぁ、高そう……。

「お前もさ、若いうちは貴重だぞ。ご飯を作るなんて、もう少し後でいくらでも作れよ。今を楽しめよ」

「ええっ、楽しいよ。ほうれん草は、あくが出るのと茹でた後は水にさらすとか」

「お前の口から、そんなこと聞きたかねぇよ。もっと、こうさ飲みに行こうぜ」

「う~ん、いいかな。昔にいっぱいやったからさ」

 ほうれん草のお浸しを、モグモグと食べる。橋本は、せて小声で聞いた。

「お前、まさか……婚活してんの?」

「何で、そうなるんだよ。ご飯作ったくらいで」

 まさかって……、もし、してたら悪いのかよ。

「まぁ、でも料理は出来るに越したことは無いけど、寂しいな。月本」

「寂しくないよ、こうやって会えるだろ」

「そのバカさも好きだよ」

「ありがとう」

 変わるって、こんな風に思われるんだ。でも、離れていくものがあっても今、やりたいことが変わっただけだから、気にすることないや。







































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