第16話 楽しさ②

 買い物は、とても楽しいものだ。1人でも楽しいし、友達と言っても楽しい。しかし、この日は事情が違った。買わないのに、裾上げを店員に聞く、デカいリュックの子と一緒だ。大丈夫、こいつはお店を見学したいのだ。俺から離さなければいい。

「俺から離れるなよ」

「なんで?」

 どうしよう、何て言おう。俺は、自分の買い物がしたい。欲しい物を探している。

「危ないからだよ」

「危ない?」

「そう、ほら高い洋服もあるだろ。万が一、チョロチョロ動いて汚してしまったら弁償べんしょうもんだぞ。買取だぞ」

 ああ、こんな見え透いたうそ、沢村の顔が納得いかないのか怪訝けげんな顔になった。やっぱダメか……。

「……そうなの? 知らなかった。先に言ってよ」

「えっ、あっそうだよ。うん、そう」

「そっか、じゃあここら辺にいとけばいい?」

「うん、そこら辺、見といて」

 キョロキョロして、棚の小物でも見始めた。よし、これで買い物に集中できる。良いのないかな~と続きを見る。う~ん、ダウンが暖かいよな、さっきのネイビーのダウンが気になる。


 あっ、ベルトもある。はしにミシンがされているのが良いんだよな。ベルトは使っていると、端からがれてしまうから端が縫われているのが無くて、探していた。うん、これ買っちゃおうかな。カゴを探して、ベルトを入れた。アウター、アウター忘れそうだ。あら、カッコいいジャケットもあるじゃない。いいなぁ、ジャケット買おうかな、いやいや、暖かいやつ。


 かなり目移りしてしまったが、やっぱりさっきのネイビーのダウンなんだよな。欲しいなぁ、戻ってもう一度見てみる。持ち上げてみても、軽い。試着だけでもしてみようかな、試着すると買いたくなるのは分かっている。よし、試着だけでもしちゃおう。店員さんに声掛ける。

「どうですか~?」

 カーテンを開いて、1回外に出て、遠くから見てみる。

「あっ、サイズもちょうどいい感じで~」

「そうですか、いい感じですか?」

「はい、似合ってますよ~」

 この言葉が心をくすぐる。色も良いし、軽いし、暖かいし……よし、買おう。

「じゃあ、これ買います」

「はい、ご案内しますね。他にお買い物は大丈夫ですか」

「はい、大丈夫です」

 もう、十分だよ。あれ? あの子は、どこ行った。夢中になってて、慌てて辺りを見渡した。


 あの子は……夢中になって、キャップを選んでいた。リュックとキャップ……まるでピクニックに行くのか。店員さんが、それに気づいたのか

「お連れ様も、ご一緒に呼びましょうか」

「あっ、いえ大丈夫です」

 一緒に買うことになりかねない。沢村、他にも行くから……ああ時間、厳しいかな。時計に目を落として、諦めようか迷った。


















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