第14話「修学旅行限定」

 朝食会場の一部でどよめきが起こった。主に女子たちの間で――


『え??あれ東雲しののめ君?なんか雰囲気違くない?』

『前髪上げるとカッコイイかも!』


 本人達には聞こえてはいないだろうけど、私にはハッキリと聞こえてしまった。

 髪型を変えたのだろうか?

 私の場所からでは遠すぎて見えない。

 横から昨日同じ部屋だった女子が――


「東雲君なんか変わったのかな?月音つきねちゃんなんか聞いてる?」

「いや……私は何も……」

「ん〜ここにきてイメチェンですか」


 後で聞いてみよう。


 ――と、思ったのだが色んな人に囲まれてて断念せざるを得なかった。


(今日も話せそうに無いなぁ……)


 ※※※


 修学旅行二日目は、南雲なぐも君の提案で食べ歩きをすることになった。

 たこ焼きにお好み焼きなどの他にも、韓国料理やスイーツなんかも沢山あるらしい。


「やっぱり最初はたこ焼きから行かない?」

「そうだね!たこ焼きは外せないもんね!」


 南雲君の提案にわたしと早坂はやさかさんも賛同する。

 私達の班はクラスの人数の関係もあって三人班だ。少しだけ気が楽だったりする。


 歩いて直ぐにあった『たこ焼き道楽』というお店でたこ焼きを購入し食べてみると――


「えっ?美味いな!さすが本場だ」

「中凄いトロトロ〜!私このソース好きかも!」


 南雲君と早坂さんが余りにも美味しそうに食べるので、つい気持ちが焦ってしまった……

 たこ焼きを口に入れると――


「あっちち!」

「アハハっ!月音ちゃん〜ゆっくり食べなよ!」

「意外とおっちょこちょいか?」

「ご、ごめん……美味しそうだったから、つい」


 恥ずかしかったが、冷めてもしまうので改めて――


「ん!美味しい!」

「ね〜!美味しいよね!あ、ソースついてるよ?」

「あ、ありがとう……」


 早坂さんにティッシュでぬぐってもらっていると


雨宮あめみやさんって一緒に過ごしてみると、普通の女の子だね」

「……そ、そうだよ?お、女の子っぽく見えないかな」


「そうじゃなくて!なんか、周りと比べて大人だなって感じで近寄りがたかったけど……」

「こうして話してみると年相応の女の子だなって」


 嬉しかったけれど、限界だったので早坂さんの後ろに隠れるように視線を遮ってしまった。

 南雲君は、少しだけ笑った後に早坂さんに話しかけていた。


 ――うぅ……ごめんなさい……


 ※※※


 お次は、これもまた有名な豚まんだ。


「お〜結構並んでるな」

「やっぱり人気なんだね〜私らも並んじゃお?」


 行列に並んで待ってると、ガラス越しから作業風景が見えるようになっていた。


「わぁ……結構早いね」


 作業を見てたらつい口に出していた。


「ね!私は出来ないな〜」

「わ、わたしも無理だよ?」


 三十分と並ばずに買う事が出来たので早速――


「え?皮が甘い?」

「でも、中の具材の塩味でちょうど良いバランスになってるから美味しい!」

「当たり前だけど、肉まんとは全然ちがうな」

「調べてみたんだけど、カラシとか付けても美味しいんだって!」


 また、今度食べる機会があったらやっても良いかもしれない。


 ※※※


「え?あれなに?」

「ん〜?十円パン?」

「せっかくだし、食べてみようぜ」


 手のひらよりも大きい十円パンの値段は五百円だった……。

 少し、ややこしい……。


「中にチーズ入ってる!」

「めっひゃ伸びふ!」

「食べながら喋るなよ……」

「ふふっ行儀悪いよ?早坂さん」


 チーズの塩っけと甘めのパンであっという間に食べれてしまった。


 早坂さんのチーズが伸びすぎて、咥えたまま喋り、南雲君がツッコミを入れる。ここに来るまでに何度も同じ光景を見てきたので、少しだけ笑ってしまう。


 次はあっちに!次はここ!とやっていると、いくら歩いているとはいえ、流石にお腹いっぱいだ。

 ホテルに戻る時間も近づいてきていたので、そろそろ戻ることに


「や〜お腹いっぱいだね〜」

「早坂は良く食べる奴なのは知ってたけど、雨宮さんも意外と食べれるんだな」

「普段はあんまりだけど、食べるのは好きだよ?」

「ちょっと、南雲!私、食いしん坊みたいじゃん!」

「気のせいだ、気にするな」


 一日目もこんな感じだったので、二人のやり取りも慣れて、しっかり笑えるようになっていた。

 そんなやり取りをしていた早坂さんが突然――


「そーいえば、南雲〜朝食の時ザワザワしてたけど、あれなんだったん?」

「あぁ……東雲が髪型をセットしてたんだよ」

「ん?そんだけ?」

「そんだけだよ?普段セットしてないから、結構印象違ったぞ」

「ほぇ〜珍しいね、修学旅行だからかな」

「『修学旅行限定でやることになった』って言ってたな」


 ――修学旅行限定か……出来れば見たいなぁ


 なんてことを考えながら歩いていると、あっという間にホテルに着いた。

 部屋に戻ろうとした時――


「お!雨ちゃん!ちょうど良いところに」


 名前を呼ばれたので振り向くと、結愛ゆあちゃんがニコニコしながらエレベーター前の椅子に座ってた。


 ちなみに、雨宮の雨の部分を取って雨ちゃんらしい……


「どうしたの?結愛ちゃん」

「いやー雨ちゃんに話しときたくてさ〜」

「話?どんな?」


『こっちこっち』と手を引かれホテルの外、人気ひとけの無いところまで連れてこられると――


「雨ちゃんはかえでって子知ってる?」

篠原しのはらさんだよね?同じクラスだから知ってるよ?」

「なら、話が早いや!」




「楓とシノくっつけちゃうけどいーい?」



 〜〜〜~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 第十四話「修学旅行限定」

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