第24話
3時間目の授業が始まる少し前に教室に戻り情報交換をする。
「そっちはどうだった何か目新しい情報とか手に入ったか?」
「いいえ特に目新しい情報は手に入りませんでした」
「ただ少し気になることが」
「気になること?」
「とは言ってもこの情報がまだ確かなものなのかどうかは分からないんですけど」
「俺が聞き込みをしたクラスの1人の女子生徒の情報によればこの前廊下を歩いていた最中に3人の女子生徒たちが噂が順調に広まってってるから、これでうまくいくって言ってたらしいです」
「聞き込みをした相手が言っていることが本当だとするとその3人の女子生徒は何をしようとしてるんだ?」
「それは俺にも詳しくは分かりませんけどそれに近いことを言っていたというのは間違いないと思います」
俺が実際にその女子生徒3人の会話を聞いたわけじゃないのでどうしても曖昧な言い方になってしまう。
「とりあえずどっちにしろまだこの噂に関しての情報を集めた方がいいのは間違いない」
「考えてみるとこの噂って少し変だよな」
「どこら辺がですか?」
図書館の幽霊の話はこの学校だけに限らず他の学校でも有名な気がするが。
「この学校の誰かがその噂を広めようと思って広めて行ったんだとしたら、なんでわざわざ他人を巻き込むような噂を作ったんだろうと思って」
「別に誰かを巻き込むつもりでその噂を作ったわけじゃないと思います話を広めていくうちにそういう風に噂が形を変えていったっていう可能性も十分考えられますし」
実際にどうやって噂が広まっていたのかは全く想像できないがトイレの花子さん的な感じで付け足されていったのかもしれない。
「とりあえず今日は色々と付き合ってもらってありがとうございます」
言いながら軽く頭を下げる。
「別にいいってきにするなよ明日も情報集めの続きするだろう」
「はいそのつもりですけどもしかして明日も協力してくれるんですか?」
「友達の知り合いが困ってるって言うんだったらなおさらな」
その日の学校から帰っている最中噂話のことについて考えていた。
誰かが何かの糸を持って今回の噂を広めていってるんだとしたら一体何のために?
「しかもなんで俺も結構図書館に出入りしてるはずなのに鈴原さんしか噂で広まってないんだ」
そう言いつつも図書館に出る幽霊が俺が噂の元になっている可能性もある。
次の日。
昨日の夜俺は色々噂のことについて考えすぎてなかなか寝付けず学校に行く支度もいつもより早く終えてしまい特にやることがなかったので学校に来ている。
「しっかりと情報が集まってない今俺が頭を悩ませたところで何の発展もないはず」
小さくぼやきながら誰もいない学校の廊下を歩く。
ふと気がつくといつのまにか図書館の前まで来ていた。
中を少し覗いてみると当たり前のように鈴原がいつも通り椅子に座って本を読んでいる。
中に入ろうと図書館の扉に手を伸ばしかけたところで一度とどまる。
「待て今ここで鈴原に声をかけても大丈夫なのか?」
またこの前みたいに話している最中に噂話のことが頭によぎって心配させてしまうんじゃないか。
「そもそもこんなことをしている時間があるんだったら情報集めに集中した方がいいんじゃないか?」
とはいえずっとこんなところに立っていたら不自然極まりないので覚悟を決め中に入る。
ゆっくりと扉を開けて中に入ってみると鈴原がいつも通りの無機質な口調でおはようございますと言ってくる。
俺も同じように挨拶お返し席に座る。
「今日は何の本を読んでいるんですか?」
「何と言ったらいいのかビジネス書に近い感じです」
何とも言えない曖昧な口調で答える。
「ビジネス書!」
驚きを含んだ口調で特に意味もなく同じ言葉を繰り返す。
「常日頃からいろんな本を読むっていうのは知ってたんですけど本当にいろんなジャンルの本を読むんですね」
これは俺の勝手な偏見かもしれないがビジネス書というのは仕事で上に上がりたいと思っている意識高い系の30代40代が読むものだと勝手に思い込んでいた。
鈴原が読むのはてっきりエンタメの本だけかと思っていたがそういうわけではないらしい。
「ビジネス書って読んでいて面白いものなんですか?」
少し悩んだ後答える。
「面白いというよりかは一つの考えに偏らないようにするために私は少なくとも読んでいますね」
俺が言っている意味がよくわからず首を傾けているとそれを察してくれたのか、 付け加えるようにこう言う。
「他にはこんな考え方があるんだなって私が知っておきたいだけなんですけどね」
「俺はそういう本を全く読んだことないのでどういう目的でそういう本を読んでる人たちが本を買うのか不思議だったんですけどそういう読み方もあるんですね」
それからしばらくたわいのない会話をしていると。
「篠崎さんそろそろクラスの方に向かった方がいいんじゃ」
言われ時計の方を見てみると思ってたよりも時間が経っていた。
それから自分のクラスに向かう。
2時間目の授業が終わったところで俺の前の方に座っている何人かの男子生徒たちが声をかけてくる。
「ちょっといいですか?」
「何でしょうか?」
自分もそうなので人のことは言えないが敬語の喋り方に違和感を感じつつ短く答える。
「ちょっと俺たちについてきて欲しくて」
この人達って確か前に紅葉さんについて俺に語ってきた人たちだよな。
少し不思議に思いながらも言われた通りついていく。
「分かっていると思うけど紅葉様にもう近づくなよ」
何でいきなり怒りを含んだ口調でそんなことを言われているんだと疑問に思っていると1人の男が詰め寄ってくる。
「とぼけるんじゃねえよ!」
「紅葉様の悪口をお前がSNSにあげてるの知ってるんだぞ」
言って男子生徒はポケットの中からスマホを取り出しつぶやき系SNSの画面を見せてくる。
俺には全く身に覚えのない誹謗中傷の画面が映っていた。
紅葉はただ男に媚びているだけの安い女。
今時ゴスロリのかっこして男の受けを狙おうなんて寒気が走る。
「違います俺はこんな文章ネットにあげていません」
「俺の言い方が悪かったな、確かにお前はこの文章をネットにあげたわけじゃない だけど協力をした」
「いったいなにに」
「この誹謗中傷にだよ!」
何でだなんでこんなことになってるんだいきなり!
その生徒たちは俺に対してたくさんの罵倒の言葉を浴びせていたはずだが途中から何を言っているのか全く聞こえない。
頭の中によぎったのは前にいじめられていた時の光景。
俺はどうあがいてもいじめられていたという過去から逃れることはできないってことなのか。
「すいませんでした」
今にも消え入りそうな声を絞り出し言ってその場を去る。
「あいつらと何を話してたんだ?」
教室に戻ると進藤が疑問の言葉を投げかけてきたが、俺の顔を見るとすぐに真剣な表情へと変わる。
「どうした!」
いつになく真剣な口調で訪ねてくる。
「いや何でもないですただちょっと変なことを思い出しちゃっただけで」
「ごまかさなくていいあいつらに何をされたんだ?」
聞かれ少し言うのをためらったがごまかしは聞きそうになかったのであの男子生徒たちに言われたすべてのことを話す。
「俺が気づかない間にそんなことになってたのか」
全て話終えるといつもの口調に戻る。
「とりあえず俺たちが今探ってる図書館の幽霊の噂と、誹謗中傷をしてるっていう噂が同時に流れてるってことか」
「そうみたいです…でも俺誹謗中傷なんて」
「分かってるとりあえずもっといろんな情報を探ってみようぜ」
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