第25話
「大丈夫今日1人で帰れるか?」
男子生徒たちに俺がいじめの今日反射だというわけのわからないことを言われ心配してくれているんだとは思うがさすがに自分の家には帰れる。
「大丈夫ですよ学校から家までそんなに距離があるわけじゃないですし」
「今日は色々と話を聞いてくれてありがとうございます」
お礼を言って後ろに顔を向け家に帰ろうとした時。
「あの!」
少し大きめの声で呼び止められる。
俺は言葉は何も返さず顔だけ後ろに向ける。
「俺に何ができるかはわかんないけど何か辛くなったりしたら行ってくれよ」
「…」
何気なく言ってくれたその言葉に俺は涙が出そうになった。
家族以外でそんな言葉をかけてくれた人は誰1人としていない。
俺は帰り道を歩きながらもし図書館の幽霊の噂と俺の誹謗中傷をしているという噂を流している人物が同じだとしたら一体何のために噂を流しているんだ?
図書館の幽霊の話だったらなんとか悪ふざけで納得できるが、俺が誹謗中傷をしていると言う噂は何かしらの悪意があるようにしか思えない。
まさか前に通ってた小学校の時に同じクラスだったやつから何かしらの恨みを俺が買っていてたまたま同じ中学校になったからそれを果たそうとしている?
「いやそれは俺の妄想がすぎるか」
「ただいま」
「おかえり今日お父さんが仕事から帰ってくるの遅くなるみたいだから先に2人でご飯食べてくれって」
「夜ご飯はもうできてるから先に座って待ってて」
「分かった」
短く言葉を返しリビングの椅子に座る。
「それじゃあ食べましょうかいただきます」
「いただきます」
「母さん」
「何?」
「学校の知り合いが噂話のモデルにされてるみたいなんだけど」
「噂話のモデルってどういうこと?」
「他の誰かしらがその知り合いを階段の話の中の主人公にした噂が今学校の中で広まってて」
「その知り合いは噂話のモデルにされてることを知ってるの?」
ちょっと前に鈴原にした時一瞬曇ったような表情をしていたのでもしかしたら知っているのかもしれないが微妙なところだ。
「分からない…」
「でも人の噂も七十五日日っていうぐらいだからそのうち何もなかったかのようにみんなしなくなるんじゃない」
お母さんは少し難しそうな表情でそう言葉を口にする。
「後もう一つ別の知り合いが誹謗中傷の濡れ衣を着せられてるらしくてどうしたらいいのかわかんなくて」
言うといつもはにこやかな表情を浮かべている母さんだが真剣な表情へと変わる。
まるで誹謗中傷の罪を着せられているのが俺だと気づかれているようで息を飲む。
「その友達に濡れ衣を着せてる生徒達ってもうある程度目星がついてたりする?」
そう尋ねてくる母さんの口調は低くどこか怒りを含んでいる。
「篠崎がお前悪口を言ってるだろうって直接言われたの?」
何も言わず小さくただ頷く。
ここで頷いてしまっては俺が言われたことを認めることになるが 気づいた時にはもう遅い。
嘘をついたことを怒っているんじゃないかと思い恐る恐る母さんの顔に目を向けるとそれでいいと何も言わず優しく頷く。
「でも俺にそう言ってきた人たちと別に仲がいいわけじゃないし」
付け加えるように言う。
「でもその人たちに誰の噂を流されたって勘違いされてるの?」
「隣の隣のクラスにいる1人の女子生徒の誹謗中傷をしてるって言われて」
「全く身に覚えのない誹謗中傷のSNSの文章を見せられて俺はやってないって言っても信じてくれなくて」
「そしたらその女子生徒が自分でやってるのかもしれないわね」
「でもなんで俺と関わったことなんて数回しかないし何か恨みを買うようなことをした記憶もないんだけど」
「人間っていうのは嫉妬ぶかい生き物だからね変なことで恨みを買ってたりするんだよ」
「例えば昔にその女子生徒と会っててその時に何か恨みを買うようなことをしたとか」
「そんなこと」
恨みを買うような知り合いすら俺の周りには昔いなかった。
「まあ例え話だから実際のところはどうなってるかわかんないけど」
「とにかく相手がSNSを噂を広める場所にしている以上なかなか突き止めるのは難しい」
次の日。
「なぁ篠崎俺思ったんだけど昨日SNSのアカウントを見せられたって言ってたろう」
周りの生徒たちに聞こえないようにするため声を潜める。
「はい」
同じように声を潜め短く言葉を返す。
「だったらSNSからその濡れ衣を着せてるやつを探した方が早いんじゃないか」
「でも俺アカウントのユーザー名とか覚えてないんですよ」
「俺が使ったことがないSNSだったのでなおさら探すのが難しいと思います」
あの画面を見る限り俺が普段情報集めに使っているSNSとは違うのは確かだ。
「それなら大丈夫だ!」
やけに自信ありげなその言い方にどうしてだろうと疑問に思っているとこう言葉が返ってくる。
「この学校に通ってるやつらが使ってるSNSはだいたい限られてるからな」
「そうだ何かあった時にすぐ連絡できるように電話番号とメールを教えてくれないか?」
「分かりました」
スマホの画面にQRコードを表示してもらいそのQRコードを俺のスマホで読み取る。
今までアプリの公式アカウントしか友達追加していなかったのでその中にリアルな友達のアカウントがあるのがなんだか不思議な感じがする。
「今日は何もしてないのに疲れたな」
言いながら自分の部屋で体を伸ばし片手に持っているスマホの画面をなんとなく見ていると進藤からメッセージが届く。
そのメッセージを開いてみるとひとつのリンクが送られてきている 。
「何だこのリンク?」
つぶやいた次の瞬間電話がかかってくる。
「どうしよう電話がかかってきた!」
慌てながらもとりあえず一度深呼吸をし恐る恐る電話に出る。
「もしもし?」
「篠崎メッセージで送ったリンク開いてくれたか?」
「今さっき送られてきたやつですね」
言いながらそのリンクをタップしページを開く。
「開きました」
「今日の朝話してたSNSのアプリが画面に表示されてると思うんだけどそのアプリをダウンロードしてくれ」
確かこのアプリはリリースされてから1週間でものすごい登録者数を獲得したってリリース当時話題になってたアプリだよな。
なるほど確かに今若者に人気なSNSだからうちの学校の生徒たちもこれを使ってる可能性が高いってことか。
「ダウンロードできました」
「そしたら適当にアカウント作ってくれ」
言われた通りメールアドレスで適当にアカウントを作る。
「入れたか?」
「はい登録完了しました」
「さてとここからが問題なんだよな」
電話越しにめんどくささを含んだ口調が帰ってくる。
「噂を流して濡れ衣を着せてるやつを探すにしてもこんなネットの海からどうやって探せばいいんだ」
それからしばらく色々な方法で検索をかけ探してみるが特に目に止まるような噂を流しているアカウントはない。
「やっぱりそう簡単には見つからないか」
「そうですね」
と言いつつも検索窓にハッシュタグをつけ自分の学校の名前を入力しスペースを開け安城紅葉と追加で入力する。
するといくつかの投稿が画面に表示される。
そのアカウントの投稿を一通り確認してみると男子生徒にあの時に見せられたのと同じ投稿が目に止まる。
その投稿のリンクをコピーしメッセージで進藤にリンクを送る。
「結構悪口つぶやかれてるな」
「今プロフィールの方を確認してみたんですけど何も設定されてないみたいですね」
アイコンもプロフィール文章も何も作成されておらず、デフォルトの人の形をしたグレーのアイコンのままだ。
「でもまあとりあえず相手が噂を広めてる場所を突き止めることができたな」
「そうですね」
言いながら俺は安堵のため息をつく。
最悪何の収穫もなく1日を終えることも覚悟していたが、とりあえずの成果を出せてよかった。
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