第89話 やりづらい(亜美編)
母からお金が振り込まれ、ようやく通常の生活に戻れた。窃盗にあってからは、水、路上の草を食べて生きていた。テレビでは見たことがあるけど、同じことをするとは思わなかった。
クラスメイトの半分以上は、元々同じ学校に通っていた人間。場所は変わったのに、一緒に授業を受ける人間が同じなのは奇跡だ。
クラスメイトの大半は、こちらに強固な恨みを持っている。下手に関わろうとすれば、身に危険が及びかねない。高校を卒業するまでは、そっとしておいた方がよさそうだ。
同じように無視をしたくせに、責任だけをこちらになすりつけようとする。自分に非があると認めることはできないらしい。都合のいいように解釈する、お花畑さながらの脳をしている。
数学の授業が終わると、女子生徒は一斉に更衣室に向かった。運動をするための服装に着替えるのが目的だ。
体操服については、こちらの方がいい。運動のしやすさだけに特化しているため、非常に動きやすい。
優香と視線が合った。彼女は礼節な瞳を、こちらに送ってきた。いじめを主導したことを、いまだに根に強く持っているようだ。一方的に負けるのは嫌なので、こちらもにらみ返してやった。
どちらもプライドが高いのか、引き下がることはなかった。廊下における、強烈なにらみ合いは続けられた。
火花をバチバチとさせていると、数学の教師がやってきた。
「二人で何をしているんですか。すぐにやめないと、処分の対象とします」
処分の対象と聞かされ、二人はにらみ合うのをやめた。トイレも監視される環境下に置かれるのは、絶対に避ける必要がある。
「今回のことは、職員会議にあげておきますから。今後はこのようなことはしないでください」
亜美、優香は頭を下げる。
「ご迷惑をおかけしました」
にらみ合っただけで、処分の対象となる。暴力、暴言を吐かなければOKという学校ではない。亜美は非常にいづらい高校だと思わざるを得なかった。
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