第84話 沖縄の学校(優香編)

 沖縄の高校には、元々の同級生がたくさんいる。場所は新しくなったけど、同じ高校に通っているような錯覚を受けることもしばしば。


 外に視線を送ると、光景はまるで違った。東京、沖縄は完全なる別世界だ。


 転校した高校では、素行不良の人間に強制労働を課す。監獄さながらの生活は避けたいところ。


 女性にとってさらにきついのは、風呂、トイレなどを監視されるところ。強制労働、食事制限以上のストレスを抱えることになる。


 不自由な生活は嫌なのか、同じクラスにいた生徒はおとなしく授業を受けている。前の学校で暴れていた人物とは別人さながらだ。


 マスコミに追いかけられたからか、いじめを主導した女はげっそりとしていた。何日間も食事を抜かなければ、あそこまでやつれたりはしない。一週間、二週間くらいは、水しか口にしていないかもしれない。


 亜美は限界を超え、授業中に倒れた。優香はそれを見ても、心配する気持ちは芽生えなかった。あの女だけは、地獄に落ちてほしい。


「亜美さんを保健室に連れて行ってあげてください」


 元の同級生は誰も手を差し伸べなかった。あいつさえいなければという思いが、根強く残っていると思われる。


「私が連れていきます」


 立候補したのは、紫の髪色、耳に4つのピアスをした女の子。見るからに不良で、近づきたいとは思えなかった。


「さつき、連れて行ってやれ」


 さつきは実害をこうむっているわけではない。亜美に対しての敵対心は、元のクラスメイトよりは小さい。

 

「わかりました。亜美さんをしっかりと連れていきます」


「もう一人くらいついていってやれ」


「わかりました。私が連れていきます」


 ギャルを思わせる厚化粧、水色の髪の毛、鼻にピアスをした女の子が席を立つ。ひいき目に見ても、同じ高校生には見えなかった。


 亜美は二人の付き添いと共に、保健室に向かっていく。足取りは重く、歩くことすら難しそうだった。途中で意識を失って、倒れてしまえばいいのにと思った。

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