第80話 寝すぎた(南編)

 目を開けたときには、周囲はすっかりと暗くなっていた。


「南、よく眠っていたね」


 文雄に寝顔を見られていた。そのことを認識すると、顔は真っ赤に染まった。


「文雄、寝顔を盗み見していないよね」


 文雄はにやにやとした顔で、


「しっかりと見させて・・・・・・」


 と答える。南は恥ずかしさからか、文雄の顔面に枕を投げつける。


「文雄、デリカシーがなさすぎるよ。実際に見たとしても、見てないという心配りは必要でしょう」


 南は恥ずかしさで、布団の中にもぐりこんだ。文雄はそんな女性に、さりげない気配りをする。


「何も食べていないから、おなかすいているだろ。おなかを満たそう」


「私はお腹すいていないよ・・・・・・」


 全力否定しようとしていると、おなかは空腹のサインを示す。あまりの恥ずかしさで、さらに布団にもぐりこんだ。 


「たいしたおもてなしはできないけど、チャーハンくらいなら作れるよ」


 文雄のチャーハンを食べられると知って、南はテンションは急上昇することとなった。


「文雄のチャーハンを食べたい」


「南の食い意地は、小学校時代のままだな。昔と変わっていなくて、すごくほっとする」


 ニヤニヤしている男に、枕を投げつける。


「文雄のバカ。チャーハンを早く作れ」  


「わかった。すぐに作ってくる」


 文雄は台所に向かった。南はついていこうとするも、空腹の体が許してくれなかった。


 南は枕の横に置かれた、ペットボトルの水を発見。空腹の限界を突破した女は、目の前にある水を一気飲みする。水分を体に入れたことで、ちょっとだけ楽になった。


 文雄は一五分ほどで、チャーハンを持ってきた。


「南、チャーハンできた」


 手作りチャーハンは湯気が立っており、食欲をおおいにそそられる。


「いただきます」


 六年ぶりに食べた手作り料理は、とてもおいしかった。ゆで卵に苦戦していたときとは、完全なる別人である。


「文雄、すごくおいしいよ」


「それならよかった」


 南はチャーハンを三分で完食。空になったお皿を見たとき、もう少し味わえばよかったと思わずにはいられなかった。


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