第75話 鳴りやまない電話&とんでもない失言(小学校時代の校長)
マスコミから大バッシングを受けたあと、学校の教師たちから冷たい視線を浴びるようになった。在籍していなかった教師だけでなく、いじめを黙認していた者も同様だ。自分たちのことは棚に上げ、責任のすべてをこちらに押し付けてくる。
来年の三月で、定年退職を迎える。あと少しの辛抱と思って、出勤を続けていくつもり。退職金をもらうまでは、校長としての責任を果たしていく。
校長室に電話が鳴った。マスコミにインタビューされてからというもの、一日中鳴りやまなくなった。
山田が電話を取ると、怒り狂った声で罵倒された。
「人間失格野郎。生徒を苦しめるクズ。人の感情を持たないモンスター」
電話を慌てて切ると、次のコールがあった。仕事の可能性もあるので、受電しないわけにはいかなかった。取引先の電話を放置しすぎると、後々が面倒なことになる
「生徒を犠牲にして、校長の立場を維持するクゾジジイ」
電話を切ったあと、すぐに着信音が鳴った。これにも対応せざるを得なかった。
「死ね、殺す・・・・・・」
ボイスチェンジャーを利用して、声を変えてくるとは。小細工をするくらいなら、堂々といえばいいのに。
校長室は電話を切るも、すぐに着信音がコールされる。我慢の限界を超えていた校長は、電話の相手に向かってぶちぎれた
「誹謗中傷するのもいい加減にしろ。これ以上やったら、おまえを殺してやるからな」
優越感に浸っていると、聞き覚えのある声が耳に入ってきた。
「山田君、君はそのような対応をしているのかね」
教育委員会の関係者とわかると、背筋は寒くなるのを感じた。
「マスコミに押しかけられてからというもの、誹謗中傷の電話ばかりかかってくるんです。業務に支障が出ていましたので、あのような言葉を・・・・・・」
電話の向こう側から、大きな溜息が聞こえる。こちらに聞かせるためなのか、三度ほど繰り返す。
「市民に殺すというような男を、放置するわけにはいかない。厳正な処分をするから、覚悟しておいてくれたまえ」
教育委員会の電話口から、先ほどの脅迫めいたメッセージを流される。校長は血の気が上がって、録音される可能性を忘れていた。
「無視の件についても、君一人の独断で行ったことにしておくから。我々も殺すといわれたから、やむなく従ったことにしておけば被害は少ない」
山田が弁明しようとする前に、電話は切れてしまった。すぐに連絡をしようとするも、鳴りやまぬ着信音はそれを許してくれなかった。
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