第63話 父の力を借りる(南編)

 自宅に戻っても、怒りは収まることはなかった。


 文雄を無視するだけでなく、集団圧力で修学旅行をキャンセルさせるなんて。子供だけでなく、大人までいじめに同調していた。学校自体が完全に腐りきっている。


 大切な人を傷つけたクズたちを、許すつもりは毛頭もなかった。父の知り合いの有力者に頼んで、完膚なきまでに地獄に叩き落とす。文雄の受けた苦しみを、何万倍、何億倍にして返してやる。


 南はすぐさま、父に話をする。普段は家にいないけど、今日に限っては自宅で過ごしていた。


 父は話を進めるごとに、眉間の険しさが増していく。


「南の大切にしている、我々と深い付き合いのある人間を、そんなふうにしていたのか。絶対に許すまじだ。○○○○などに頼んで、強力な包囲網を敷くように手はずを整える」


 父は音を立てながら、お茶を飲む。いつにもなく、怒っているのが伝わってきた。


「クラスメイトだけでなく、学校関係者にも同様にする。無視を容認した点においては、こいつらのほうが罪は重い」


「おとうさん、ありがとう。高校ではそういうことはないから、小学校、中学校をターゲットにしてほしい」


 父は大きく頷いた。


「わかった。小学校時代の校長、中学校時代の校長は徹底的にマークする」


 小学校時代の校長、中学校時代の校長を地獄に落としても、傷は癒えることはない。それをわかっていても、逃げ得だけは絶対にさせたくなかった。


「困ったことがあるなら、いつでも相談してこい。人脈をフルに駆使して、たくさんの助っ人を呼ぶようにする。これから電話するから、席を外してくれ」


 父はすぐさま電話を取った。文雄をいじめたものに対する、おぞましいまでの復讐劇が幕を開けようとしていた。


*南が転校してから、10日間目くらいの出来事です。

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