第62話 南の激怒
文雄の座っている席に、琴美がやってきた。
「橘君は小学校、中学校の修学旅行はどうしていたのだ?」
「いろいろな観点から、不参加で折り合いをつけた。参加したとしても、邪魔になるのはわかりきっていたし」
修学旅行をサボれば、リフレッシュ休暇になる。小学校時代、中学校時代はそのように割り切っていた。
「無視するだけでなく、修学旅行に参加させないなんて。いろいろとむごい仕打ちを受けていたんだな」
「小学校、中学校時代はいろいろとあったから。修学旅行だけでなく、運動会、文化祭といった行事も不参加だった。卒業式のときの記念写真にも映っていない」
文雄、琴音のところに南が近づいてくる。
「五年間も無視するだけでなく、修学旅行、運動会、文化祭などにも参加させないなんて。あまりにひどすぎて、擁護できる要素は何もないね。○○○○、○○○○などに頼んで、無視をしたクラスメイト全員に強力な圧力をかけるべきだね。就職は当然のこと、他についても、厳しくやっていこう。私の大切な人を傷つけた報いは、必ず受けさせてやる」
南の話を聞いた、クラスメイトはざわざわとなった。
三人のいるところに、翠がゆっくりとやってくる。無視の件がなかったら、恋人になっていた可能性のある女だ。
「橘君に対する行動は、絶対に許されるものではない。そうだとしても、就職まで圧力をかけるのはやりすぎだよ。私たちは大人になった瞬間に、路頭に迷うことになる」
あれだけのことをしておいて、自分の身を守ろうとする。保身術だけは、完璧なようだ。
翠に続き、近本涼子もやってきた。
「南さん、ひどすぎるよ。私たちは自主的にしたのではなく、亜美に渋々やらされていただけ。無視をしていたとき、ものすごくつらい思いをしたんだから・・・・・・」
どんな理由であれ、仲間外れにしたのは事実。それについては、弁明のしようがない。
南は感情を押し殺した声で、
「五年間も仲間外れにしたんだから、当然の報いだと思うけどね。あなたたちが社会に出ることの方が、よっぽど有害だよ。会社は一人の悪い奴で、簡単に崩れ去っていくからね。無駄に話をしようとすればするほど、立場は悪化していくよ」
と返す。二人は強烈な圧を感じたのか、南のところから離れていった。
「夕方には話をしておく。明日になったら、必ず動きがあるはずだよ」
いじめを実行、容認したものに対する地獄のカウントダウンが始まった。文雄はようやく、これまでの苦労が報われたと思った。
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