第58話 沖縄に転校(優香編)

 机に落書きをしたとして、無期停学処分を受ける。復帰は未定とされていることから、学校にいつ戻れるのかわからない。留年しないためにも、一日も早く授業を受けたい。


 亜美に悪口を書いたことは、今でも正しいと思っている。学校生活をめちゃくちゃにした女には、制裁を加える必要がある。


 事件を起こした男たちにも、同情する部分はおおいにあった。あいつのしてきたことは、死に値するレベル。自分から命を絶って、償うべきだ。


 父、母には無期停学になったことを隠したまま。いつかはばれるとわかっていても、真実を伝えるのはためらわれた。


 優香の部屋に、母が入ってきた。来年で63歳になる、年老いたおかあさんである。


「優香ちゃん、無期停学処分になっているみたいだね」


 母に知られた焦りからか、声はおおいに裏返っていた。


「どうしてそれを・・・・・・」


「あなたの様子がおかしいから、学校に確認を取ってみたの。ちょっと前から、無期限停学になっているというじゃない。重要なことをどうして隠していたの?」


 母は冷めた口調でいった。


「学校側に確認を取ったところ、復帰させるつもりは二度とないといっていたわ。同じ学校に通いたくても、通えない状況になっているみたい」


 自主退学に追い込むために、無期停学の処分を下した。学校側は今回の件を、絶対に許すつもりはないようだ。


「あなたは他の高校に転校するしかなさそうね。おとうさんと相談して、どこに通学させるのかを決定するね」


 あなたに拒否権はない、母の口調からはっきりと感じた。


「自宅から通える高校ではなく、遠いところに住むことになるね。受け入れ先も少ないだろうから、どこであっても文句をいわないように」


「・・・・・・」


 母は下唇をなめる。


「優香ちゃんの育て方を間違ったみたいだね。おかあさんとして、とっても情けない気分だよ」


 欠陥品を育てるつもりはなかったのに、そんな本音が聞こえてきそうな内容の言葉だった。

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