第52話 転校初日の感想(琴美視点)

 ボクは横たわった状態で、新しい学校の一日目を振り返っていた。


 暴言を書きあっていたクラスということもあって、教室内の雰囲気はすこぶる悪かった。クラスメイトはお互いに、強烈な不信感を募らせており、まともに会話できる状況ではなかった。自分たちで蒔いた種なのだから、きっちりと摘み取っておけ。


 いじめに積極的に関わっていた、生徒たちとはかかわりを極力減らす。平穏な生活を送るためには、必須事項といえる。まともに関わったら、文雄の二の舞になりかねない。長期的な嫌がらせを受ければ、ポジティブ思考は完全に吹き飛んでいく。


 五年間も無視されていたとあって、文雄の心は大きくすさんでいた。本人に自覚はなくとも、はっきりと伝わってくる。よほどのことがなければ、元通りになることはなさそうだ。


 二人三脚をしていたとき、腰を持つ手は震えていた。犯罪者になりたくない、犯罪者になりたくないという言葉がはっきりと聞こえてくるかのようだった。陥れるつもりはなかったけど、悪いことをした気分になった。次に提案するのは、信頼度をぐっと高めてからにしよう。


 新しい環境に疲れを感じたのか、大きな欠伸を数回繰り返す。いつもと同じつもりでも、そうではなかったらしい。ちょっとだけ昼寝をして、疲れを解消したほうがよさそうだ。


 横になっているとき、腰に感じた温もりを思い出す。おかげで心は安定し、深い眠りにつくことができた。長時間睡眠を取りすぎて、夕食をすっぽかすほどだった。

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