第49話 体育の授業が終了

「今日はここまでだ」


 文雄はよほど疲れたのか、地面に座り込んでいた。


「橘君、ペアを組んでくれてありがとう。すっごく楽しかったぞ」


琴美は満足そうな表情を見せる。


「朝倉さん、こちらこそありがとう・・・・・・」


 一周する前にタイムオーバーし、詩織と走る時間はなかった。彼女との二人三脚は次回までお預けだ。


「橘君は草食系男子なんだな。腰に回した手で、いやらしいことをたくさんすると思っていたぞ。男と交際したときのために、本能を見ておきたかった」


 琴美はあばら骨が浮いていて、肉をほとんど感じなかった。そのことによって、性欲を少しは抑えられた。もうちょっと脂肪がついていたら、暴走まっしぐらだった。


 理性に勝利を収めるも、集中力の維持は難しい。琴美はすごくいいにおいを発しており、そちらに意識を取られていた。見た目、口調は男なのに、中身は完全に女である。


「次の授業まで短いのだ。すぐに着替えて、教室に行くようにしよう」


「わかった」


 南は冷たい笑顔を向けながら、手を差し出してくる。


「文雄、おつかれさま」


「南、すっごく怒ってる?」


 南は顔をそむける。


「怒ってないもん。私はいたって普通だもん」 


 わかりやすい態度を見せられ、苦笑いするしかなかった。  

 

「南さん、更衣室に行こう」


 詩織の誘いに、南は乗ることはなかった。


「一人で行くから・・・・・・」


 南は全力で更衣室に向かう。文雄、琴美、詩織はその様子を後ろから見つめていた。


 運動したことで、体は水分を欲している。早目に着替えを終えて、水分補給するための時間を確保したほうがいい。文雄は急いで、更衣室に向かった。

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