第46話 体育の授業(二人追加)

 文雄、南のところに、転校してきたばかりの二人がやってきた。


「植野さん、朝倉さんはあちらにいかなくていいの?」


 琴美は小さく頷いた。


「ボクたちはこちらで受けることにしたんだ。あちらは評判も良くないみたいだし、あんまりかかわりたくはないかな。もうすぐいなくなりそうだし・・・・・・」


 女性の一人称がボク、アンバランス感は新鮮だった。


 詩織は髪の毛をきつく縛った。


「転校の決まる前に知っていたら、他の学校にしていたよ。準備も終えていたので、変更することもできなかった」


 犯罪者まみれの高校ではなく、平穏に過ごせる学校に通いたい。生徒としてはごくごく自然な心理といえる。


「体育の授業は何をしているの?」


「少人数だったから、ランニング中心だったよ」


 一人だけで授業を受けていたときは、ランニングだけに取り組んでいた。黙々と足腰を鍛え続けていた。


「四人になったことだし、新しいことをやってみようよ。みんなは何をしてみたい?


 詩織は思いがけない競技を提案する。


「二人三脚で勝負してみようよ」


 文雄は二人三脚と知って、慌てた声を出す。


「男一人、女三人だよ。ペアをどうやって組むの?」


 南はいつにもなくノリノリな声で、


「私とペアを組もうよ。男女ペアだとしても走りやすいでしょう」


 といった。これで決まると思っていたけど、そうはいかなかった。


「メンバーはランダムで決める。誰と走るのかは運次第のほうがワクワクするだろう」


 親しい女性と走るならまだしも、初対面の女と走るのは厳しい。文雄の心の中に、大きな闇が生じることとなった。


「梅野さん、朝倉さんは初対面。隣が気になって、二人三脚をするのは無理だ」


「明らかに故意のセクハラをしなければ、特に気にすることはないから」


 二人三脚を進めようとする女性に、南はストップをかけた。


「文雄はいろいろな人に傷つけられて、メンタルを大いに消耗しているの。これ以上は傷つけないであげて・・・・・・」


 詩織は納得したのか、すぐに競技を変えた。


「二人三脚が無理なら、ドッジボールで対戦しよう」


 二対二でドッジボールをする。どんな未来が待ち受けているのだろうか。


「ペアについては、ランダムで決めよう」


 南はいつにもなく、闘志を燃やしていた。


「文雄とペアになるぞ」 


 ランダムにペアを決めた結果、文雄&詩織、南&琴美ペアとなった。南は勝負に敗北したみたいに、がっくりとしていた。

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