第43話 南と帰宅

「文雄、気分転換に付き合ってくれない」


 文雄の学校に転校してから、いろいろなことに巻き込まれてきた。元気な姿を見せていても、たまっているものはあると思われる。協力することで、彼女の気持ちを楽にしてあげたい。


「いいけど、どこで気分転換するの?」


 遊ぶ場所は非常に少ない地域で、選択肢は限定されている。離島に住んでいることによる、ネックといえる。


「文雄の家がいい。羽を思いっきり伸ばして、気分転換するぞ」


「みなみな。あんまり羽目を外すのはやめろ」


 前回にやってきたときは、いきなり服を脱ぎ始めた。文雄は突然の事態に、あごをあんぐりとさせていた。


「前回以上に、驚かせようと思っているのに・・・・・・」


「あれ以上のことをされたら、部屋中は真っ赤に染まるぞ。俺の命だって、あやうくなる」


 南はほっぺに空気を詰め込む。


「文雄、女の子に耐久力なさすぎ。つまんない、つまんないよ」


 小学校高学年から、異性と関わることはなかった。女性に対する免疫力は、0もしくは0に限りなく近い。


「免疫力をちょっとずつアップさせていくから・・・・・・」


「ちょっとずつではなく、一気にあげるようにしてね」


「南、無茶をいうなよ」

 

 南と歩いていると、KIYOTEの車が横にストップする。母の愛用しているものに、非常に似通っていた。


 車の窓が開けられたのち、見覚えのある人物が姿を現した。


「文雄、南ちゃん・・・・・・」


 南は丁寧に頭を下げる。


「おかあさん、お久しぶりです」


「南ちゃん、文雄の相手をしてくれてありがとう」


 南は胸を張った。


「文雄の将来のお嫁さんになるんだよ。これからもいっぱい、いっぱい尽くしていきたい」


「南ちゃん、ありがとう。おかあさんは仕事があるから、これで失礼するね」


 母は車を発進させる。文雄、南はその様子を静かに見守る。


「おかあさんはすごく元気な人だね」


「そうかもしれないな・・・・・・」


「文雄のあの人と過ごしたら、元気になれるんじゃない」


「そうなれるといいな・・・・・・」


 南に腕を引っ張られ、自宅に向かっていく。




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