第42話 全校集会

 体育館には一年生~三年生の全生徒、全教師が集まっていた。学校において、殺人未遂を取り扱う方針のようだ。あれだけのことが起きれば、学校として放置するのは難しい。


 教師の頬の筋肉は、いつにもなく硬直していた。事態が事態だけに、やむを得ないと思った。


 校長は強張った声で、話をスタートさせる。


「体育館にお集まりいただきまして、ありがとうございます。今日はどうしても伝えることがあって、こちらに来ていただきました」


 校長は深呼吸で息を整えたあと、まくしたてるような口調で事実を伝える。 


「本校の生徒が、殺人未遂で逮捕されました。現行犯なので、シロの可能性は0パーセントです」


 どんなに早口で話していても、殺人未遂は頭に残る。生徒たちは事件を知って、おおいにざわざわすることとなった。


 隆三は驚きをあまり感じなかった。「死ね」と書くような人間なら、こういうことをやっても不思議はない。


 校長は不安をあおるような声で、


「みなさん、静粛にしてください」


 といった。当然のことながら、生徒たちの動揺は増すこととなった。


「みなさん、静かにしてください」


 校長は心を入れるためなのか、藍色のネクタイをしめなおした。


「将来を守るためにも、犯罪に手を染めるのはやめましょう。一度の失敗で、人生は終了します」


 人間の失敗に不寛容な時代となり、一度の犯罪でゲームセットが当たり前になった。能力を持っていることよりも、問題を起こさない社員を優先するスタンスを取っている。


 体育館の近くで、パトカーのサイレンが鳴った。音は大きくなっていることから、こちらにやってきているのは確実だ。


 パトカーの音を聞き、クラスメイトはあたふたとしている。何をやったのかはわからないけど、犯罪まがいのことに手を染めたのは断言できるレベルだった。


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