第38話 母の優しさ?(亜美編)

 テーブルの上には、うな重が置かれていた。湯気を出しており、とってもおいしそうである。


「亜美ちゃん、好きなだけ食べていいわよ」


 うなぎは少なく見積もっても、三人分は用意されている。おなかいっぱい食べてほしいという思いが、はっきりと伝わってくる。


「おかあさん・・・・・・」


「早く食べないと、せっかくの料理が冷めるわよ」


 冷たい仕打ちをしていても、母親としての感情は残っている。そのことに対して、ちょっとだけ嬉しい感情が芽生えていた。


 亜美はうなぎを食べる。これまでになかった、食材本来の柔らかさを感じられた。


 うなぎを食べている娘の前で、母は瞳に涙を浮かべていた。


「どんなことがあっても、母としての感情は捨てられないんだろうね。亜美ちゃんがいなくなるのは、とっても寂しいよ」


「おかあさん・・・・・・」


 母は涙を腕で拭った。


「私がきっちり教育していれば、心は歪むことはなかった。一人の母として、一人の人間として、反省しないといけないね」


 母の話を聞いて、自分の過ちを猛烈に反省した。

 

「新しい場所は、いばらの道だと思う。そうだとしても、くじけずに生きるようにしてね」


「おかあさん、ありがとう。私は強く生きる」

 

 ちょっとでも残すことは、母親に対する失礼に当たる。亜美は机に置かれた、うなぎをすべて食べきった。

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