第36話 体育の授業(雨の日)

 深夜のゲリラ豪雨によって、グラウンドには水たまりができていた。外で運動するのは難しい。


 雨でグラウンドを使えないときは、クラスの全員が同じ場所で授業を受ける。昨日みたいな、リラックスタイムとは無縁だ。


 体育の授業を受ける前から、他の生徒たちは苦しそうにしていた。あんな状態で、50分を乗り切ることはできるのか。途中で倒れて、保健室に運ばれるシーンが目に浮かんだ。


「今日は10分の持久走を3度行う。10分の休憩を2回はさむから、その間にしっかりと休むように」


 すぐにも倒れそうな生徒に、持久走を命じる。わざとでなかったとしたら、嫌がらせの天才と呼ぶにふさわしい鬼畜。復讐したいと思う人間ですら、そこまではなかなかやろうとはしないレベル。


 文雄、南はランニングをスタートさせる。南は昨日のことがあったからか、ゆったりとしたペースで走っていた。


 他の生徒については、なかなか走ろうとはしなかった。教師はその姿を見て、


「ランニングをさぼったら、欠席扱いにするぞ」


 といった。欠席日数を増やして、留年に追い込もうとしているのを感じた。


 生徒たちはしぶしぶ、ランニングコースを駆けまわる。体の動きは、休ませろ、休ませろといっていた。


「歩いているようなペースはダメだ。もうちょっとスピードをあげろ」


 生徒たちはペースを上げるも、先ほどとほとんど変わらなかった。


「しっかりと走れ・・・・・・」


 教師の叱咤激励もむなしく、生徒たちはのろのろのペースで走っていた。あまりの遅さに、幼稚園児と一緒にいるような気分になった。


*次は亜美の引っ越しの話です。






 


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