第35話 7人の早退者(翠編)

 一時間目の授業開始直後に、7人の生徒が自主的に早退した。


 早退した生徒の中に、学校に通学するための気力は残されていない。このまま自主退学の流れは十分にある。数日後には、閉校レベルの人数まで減ってしまうのだろうか。


 早めに対処しておけば、退学者を出さずに済んだ。問題をずるずると先延ばしにしたことで、被害は拡大する。尻に火のつかないうちに、処理することは大事だと学んだ。


 チャイムの鳴ったあと、「アイドルちゃん」が教室に入ってきた。


「みなさん、おはようございます」


 文雄、南の二人だけ、「おはようございます」という挨拶を返す。他の生徒は、口に固いチャックをしていた。


「みなさんにお知らせがあります。来週に転校生がやってくることになりました。仲良くしてあげてくださいね」


 転校生と聞いても、心に来るものは何もなかった。


「高校では引き続き、言い争いなどの調査をしています。完全に膿を出し切って、健全な生活を送れるようにするので、しばらくお待ちください」


「アイドルちゃん」の視線は、クラス中に向けられる。あんたたちの学校生活は、風前の灯火だといいたいらしい。

 

「五分後に、物理Bの教師がやってきます。それまでの間、自習しておいてください」


「アイドルちゃん」は教室からいなくなる。文雄、南は教科書を開き、他の生徒はアクションを起こさなかった。物理Bの教師がやってくるまで、ただ待っているだけだった。

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