第34話 さらに人数の減った教室

 教室の机、椅子は3つ減っていた。昨日呼ばれた4人のうち、3人は自主退学もしくは学校から退学処分を下されたと推測できる。


 5年前に自分を苦しめた輩だ、どんどんいなくなっていく。いじめを受けたものとして、これほど愉快と思うことはない。


 もっと人数が減れば、さらに過ごしやすい学校生活になる。無視をされていたときには、まったく想定できなかった光景だ。悪いことをした者には、必ず天罰が下るようにできている。


「文雄、おはおは・・・・・・」


 どんよりとしたクラスで、唯一元気な声を発する南。図太い神経の持ち主であると、改めて思った。


「みなみな、おはよう・・・・・・」


「今日もしっかりとやっていこうね」


「そうだな」


 南の髪を見ると、形がはっきりと変わっていた。


「南、髪型変えたのか・・・・・・」


「気づくのが遅すぎるんですけど・・・・・・」


「髪をいじるイメージがなかったから・・・・・・」


「文雄に見てもらいたくて、一時間もかけたんだよ」


 髪の手入れに一時間もかける、男には全く想像のできない世界観。男、女は異なる生き物だと感じた。


「気づいてもらえただけでも、髪型を変えた意味はあった。今日も絶好調に過ごせるぞ」


 小学生時代は内気だったのに、高校生になって陽気キャラクターに変化した。文雄のいないところで、どのような心境の変化があったのか。 


「今日も体育の授業があるね。二人きりでいられて、とってもハッピーだよ」


「そう思ってもらえたのなら何より・・・・・・・」


 文雄は顔を下に傾ける。


「文雄、どうしたの?」


「南以外の人と接しないまま、社会んになったらどうなるのかなって思った」


 無視をされてから、他人とまともに関わる機会を失った。コミュニケーションに対して、大いに不安がある。


「仕事をせずに、○○のプロになればいいんだよ。そうすれば、人と関わらなくても生きていける」


「そんな簡単にできたら・・・・・・」


 南は明るい声で、文雄を鼓舞する。


「文雄、やってみようよ。私も協力するから」


「やってみるだけなら・・・・・・」


「よし。今日から少しずつやっていこう。文雄は努力家だから、すごい成果を出せるようになるよ」


 人と話さなくなってから、読書、勉強が親友的なポジション。1日10時間の努力は、お手の物である。


「よし、やってみる・・・・・・」


「善は急げだ。今日からやっていこう」


 南と新しい道を歩む。これまでにはない、刺激に包まれていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る