第33話 授業が終わっても地獄(翠編)
「本日の授業は終了だ」
翠は授業終了を聞いた瞬間、開放感で満たされていた。あまりにも長すぎる一日は、ようやく終わった。
大きく息を吐こうとする前に、数学の教師の声が教室内に響いた。
「○○、○○、○○、○○、職員室に来るように」
4人の生徒はやばいことがあるのか、金魚さながらに口をパクパクとさせていた。明日からは、クラスにいないということも十分にあり得る。
明日に生徒が減り、明後日もさらに減らされていく。30人前後で始まったクラスは、春を迎えるころには一桁まで減少するのは確実。5人未満になっても、何ら不思議はなかった。
翠は机に暴言を書く、言い争いをするといったことはしていない。他の生徒と比較すると、学校に残れる可能性はあると思っている。
「文雄、帰ろう」
「ああ。一緒に帰ろう」
南の呼びかけに、文雄はこくりと頷いた。その姿を見て、心は強い衝撃が走ることとなった。
翠は一斉無視をスタートさせるまで、文雄と親しくしていた。休日には遊びに行くこともあるなど、学校外における付き合いもあった。クラスの中で一番親しいのは、自分という自負を持っていた。
亜美の計画によって、二人の仲は完全に切り裂かれる。翠は無視したくなかったけど、周囲に同調せざるを得なかった。少数派を助けたりしたら、いじめの的になりかねない。自分を守るために、大切な人を切り捨てた。
みんなで声をかけようとなったあとも、関係は元に戻らなかった。深く傷つけたものに、チャンスは与えられなかった。
亜美さえいなければ、恋人になれていた。あの女は生きていることが、みんなにとっての害悪だった。もっと早く駆除できていれば、多くの人は救われていた。あいつをチームから外さなかったことを、おおいに後悔していた。
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