第25話 収拾不能(亜美編)

 亜美は一日の休みを経て、学校に戻ってくる。本音はもう一日、もう二日くらい休みたいけど、親は許してくれなかった。


「文雄、おはよう・・・・・・」


「みなみな、おはよう・・・・・・」


「文雄、居心地はいい?」


「いいとはいえないけど・・・・・・」


 今日はいつにもなく、教室内がピリピリしている。何か悪いことが起こらなければいいけど・・・・・・。

 

 亜美のところに、10人くらいの男女がやってきた。誰一人として、笑顔を作っていなかった。


「あんたのせいで、親に怒られたじゃない。どうしてくれるのよ」


「そうだそうだ。親はショックのあまり、倒れてしまったんだぞ」


「野球部を強制退部になった。必死に練習してきた、10年間を返せ」


「おまえさえ生きていなければ・・・・・・」


 言い争いを始めたタイミングで、「アイドル先生」が入室。あまりのタイミングの良さに、盗聴を疑った。


「アイドル先生」はコホンと咳をする。


「教室で言い争いをしたので、処分の対象となります。対象者はすべて、職員室に来てください。破ったものについては、処分がさらに重くなります」


 亜美に因縁をつけた男女は、「アイドル先生」に必死に抵抗する。


「こいつが主導したから・・・・・・」


「そうだそうだ。殺すと脅されたから、しぶしぶ従ったんです:


「私は無視はやりたくありませんでした」


「私たちも被害者です」


「そうです。私は悪くありません」


 同じようにしておいて、自分だけ罪を逃れようとする魂胆。こいつらも完全に腐りきっている。


「アイドル先生」は眉間に大量の皺を寄せる。


「どんな理由があっても、無視をしたことは同じでしょう。罪を軽くしようとするなんて、最低最悪ですね」


「アイドル先生」のところに、口髭を生やした校長がやってきた。


「先ほどの話に加担した者は、すぐに職員室に来てください」


「アイドル先生」を圧倒的に上回る、オーラを醸し出していた。彼の姿を見て、逆らってはいけないのを察した。

  

 校長の視線はこちらに向けられる。


「あなたも来ていただけますか?」


「私は何もやっていません」


「元をたどれば、責任はすべてあなたです。学校に存在していることが、他の生徒に悪影響を及ぼします」


「いきはら」の4文字が、鮮明によみがえった。校長は直接はいわないけど、あなた自身が「ガン」だといっているようなもの。この場所にはいられないことを、高校生ながらに理解させられた。

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