第20話 亜美は学校を休んだ

 亜美は授業開始前になっても、学校にやってこなかった。無遅刻無欠席がとりえだっただけに、珍しいなと思った。


 クラスの中で、誰も同情する者はいなかった。無視を強いられたとあって、プラスの感情を持つのは難しいようだ。


 クラスメイトは自分の席に座り、授業の開始を待っている。おしゃべりをするものは、まったくいなかった。文雄はこれを見て、無視をすることでしか結束できない人たちだと思った。


「文雄、もうすぐ授業だね・・・・・・」


 南はメイクをしているのか、いつもよりもキラキラとしていた。


「南、そろそろ席に戻ったほうが・・・・・・」


「そうだね。席に戻る」


 教師の計らいなのか、席はすぐ後ろとなった。唯一の味方がそばにいてくれて、とっても心強い。


「文雄、ちょっとは元気になれた?」


「少しは・・・・・・」


「いろいろなことがあると思うけど、一つ一つ乗り越えていこう」


「OK・・・・・・・」


「文雄のところに、遊びに行ってもいい?」


 文雄は小さく頷いた。


「ありがとう。今日から遊びに行くね」


 文雄のところに、男のクラスメイトがやってくる。ずっと同じクラスなのに、名前はすぐに浮かばなかった。無視をされているうちに、記憶から抜け落ちたと思われる。


 南は何かを察知したのか、


「文雄に声をかけないで」


 と釘を刺す。男はひるんだものの、こちらに視線を向けた。


「あの・・・・・・」


 チャイムが鳴ると同時に、数学の教師は教室に入ってくる。男はタイミングを失ったのを察し、自分の席に戻っていった。

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