第20話 亜美は学校を休んだ
亜美は授業開始前になっても、学校にやってこなかった。無遅刻無欠席がとりえだっただけに、珍しいなと思った。
クラスの中で、誰も同情する者はいなかった。無視を強いられたとあって、プラスの感情を持つのは難しいようだ。
クラスメイトは自分の席に座り、授業の開始を待っている。おしゃべりをするものは、まったくいなかった。文雄はこれを見て、無視をすることでしか結束できない人たちだと思った。
「文雄、もうすぐ授業だね・・・・・・」
南はメイクをしているのか、いつもよりもキラキラとしていた。
「南、そろそろ席に戻ったほうが・・・・・・」
「そうだね。席に戻る」
教師の計らいなのか、席はすぐ後ろとなった。唯一の味方がそばにいてくれて、とっても心強い。
「文雄、ちょっとは元気になれた?」
「少しは・・・・・・」
「いろいろなことがあると思うけど、一つ一つ乗り越えていこう」
「OK・・・・・・・」
「文雄のところに、遊びに行ってもいい?」
文雄は小さく頷いた。
「ありがとう。今日から遊びに行くね」
文雄のところに、男のクラスメイトがやってくる。ずっと同じクラスなのに、名前はすぐに浮かばなかった。無視をされているうちに、記憶から抜け落ちたと思われる。
南は何かを察知したのか、
「文雄に声をかけないで」
と釘を刺す。男はひるんだものの、こちらに視線を向けた。
「あの・・・・・・」
チャイムが鳴ると同時に、数学の教師は教室に入ってくる。男はタイミングを失ったのを察し、自分の席に戻っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます