第15話 二人きりの世界に誰も入れるつもりはない(南編)

「ふみふみ、おはよう・・・・・・」


 文雄は想定していなかったらしく、大いに戸惑っていた。南はそれを見て、ちょっとだけ楽しいと思った。 


 南はどんな評価を受けたのかを聞いてみる。


「私の考えたニックネーム。センスはどうだった?」


「ちょっとダサいかな・・・・・・」


 三日三晩考えたネーミングセンスは、芳しい評価を得られなかった。次こそは喜んでもらえる、呼び方を生み出していきたい。


「しょうがない。新しいニックネームを思いつくまで、文雄と呼ぶことにするね」


「ずっとそれでいい。みなみな、下手な名前は考えるな」 


 大好きな人にニックネームで呼ばれ、大いに胸キュンする。


「みなみなばすごくいい名前だよ。今度からは、みなみなと呼んでね」


 文雄は心のこもっていない声で、


「みなみな」


 と呼んだ。私は気に入らず、文雄のほっぺたをつまむ。


「心があまりにこもってないよ。もっとかわいらしくいって」


 二人きりのひとときを邪魔するためなのか、三人ほどの男たちがやってきた。


「ま・・・・・・」


「文雄を無視した男とは、一言も話す気はないから」


 文雄を傷つけるだけでなく、二人きりの時間まで妨害するとは。私にとって、生きていること自体が害悪と呼べる存在だ。


「あれは・・・・・・」


「将来の婿を傷つけたのはいっしょ。そんな人たちと、楽しく話せるわけないでしょう」


「ひとこと・・・・・・」


「1万パーセント無理・・・・・・」


「み・・・・・・」


「あんまりしつこいようだと、ストーカーとみなすからね」


 ストーカー発言は効果テキメンで、男たちはすぐに離れていった。


 

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