第13話 責任転嫁合戦&ありえない事実

 学校の教室内では、朝から醜いバトルが繰り広げられている。


「おまえのせいで、南さんに嫌われちゃったじゃないか」


「俺たちの青春を返せ」


「そうだ、そうだ。責任を取れ」


 小学生レベルの喧嘩を、連日のように教室でする。人間レベルは、小学生のころから何も変わっていなかった。 


「私は提案しただけで、無視をしたのはあんたたちだよ。他人を責めるのではなく、自分の行いが悪いだけと気づきなさい」


「あれは提案ではなく、完全なる命令だった」


「そうだ、そうだ。あれは命令だ」


「おまえは従わない奴に、殺すといっていたじゃないか」


 亜美は目的を達成するためなら、どんなことだってできる。絶対に関わってはいけない女であることが証明された。


「そんなことを真に受ける方が悪いんだよ」


「あのときの目は、完全にガチだった」


「そうだ、そうだ。殺されるかもしれないと思ったから、みんな従ったんだ」


「私のことを人殺しのようにいわないで」


 男子生徒の一人は、挑発的な目を向ける。


「亜美も残念だったな。中学三年のころから、文雄に興味を持っていたんだろ」


 いじめを主導していた女が、自分に興味を持つようになったから、無視をやめようといいだしたのか。中身は完全に腐りきってしまっている。


「そ、それは・・・・・・」


 あの強気な女が否定しなかった。男たちのいっていたことは、事実とみなしてよさそうだ。


「文雄には、将来のお嫁さんがいる。とびっきりの美人で、性格も優れている女が。あんたがどんなに頑張っても、絶対に手の届かないところに行ってしまった」


「告白もすることなく、フラれてやんの。ざまあみろ、ざまあみろ・・・・・・」


「仮に告白したとしても、絶対に届かないだろうけど・・・・・・」


「いじめをした女を好きになる男はいない」


 文雄のところに、南がやってきた。


「文雄・・・・・・」


 文雄は言葉をストップするために、口元に人差し指を当てた。南は何かを察したのか、言葉をストップさせた。


「あんたにはもう付き合いきれない。金輪際、縁を切ることにするよ」


「あんたと接したばかりに、人生は台無しだ」


「そうだ、そうだ。俺たちの人生を返せ」

 

 亜美は一歩も引かなかった。


「私の恋愛に協力しなさいよ」


 男たちは罰を作った。


「おまえに嫌われてもいいけど、南ちゃんに嫌われるのは嫌だ」


「ちょっとでも可能性があるなら、お話をしたい」


「俺たちは最後まであきらめない」


 南はクラスメイトの言葉に、大きな溜息をついた。


 文雄、南は示し合わせたように、教室に入っていく。言い争いをしていた四人の男女は、途端にあたふたし始める。その様子を見ても、これまでの鬱憤は軽減されることはなかった。

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